第18話 モテモテ?
兄妹喧嘩? が終わってから少しの時が過ぎた。西園寺も完全に教室に馴染んでいて、そのせいかみんな男だった西園寺の事を少し忘れてきているようだ。
それは寂しくもあるが、今の西園寺がクラスに馴染めた事を喜ぶべきか? 少し複雑な心境だ。
「……まあなんにせよ良かった」
「……何が良かったの?」
「うわぁ!?」
独り言に反応されてびっくりした。
いつのまにか三鷹が隣にいた。神出鬼没の三鷹に少し慣れてきたと思ったらこれだ。暗殺者になれるんじゃないか?
「相変わらずビビりすぎじゃね?」
そしてケタケタと望月が笑っている。
「いや、ビビるでしょ……あれ? 西園寺は?」
この2人が同時に俺の席に来る時は決まって西園寺が居るのだが今はいないようだ。よくみると教室にも居ない。
……トイレか?
「……告白されてる」
「は?」
告白? 誰に? まさか男にか?
「アンタ知らなかったの? まことってかなりモテてるんだよ。あーしが知ってる限りでも5人に告られてるし」
「ゴホッゴホッ!? ご、5人も!?」
衝撃のあまりむせてしまった。俺なんてまだ一回も告白されたことないのに、転校してきて1ヶ月も経ってないんだぞ。
「そーよ。今日は同じクラスの海斗に呼び出されてるんだって」
「海斗?」
「同じクラスなのに分かんないの? 鳴海海斗よ。ほら、よく馬鹿やってる奴いるでしょ」
「あいつか……」
鳴海って言われて、ピンときた。西園寺に勝てないレベルではあるが、アイツもイケメンだ。そして西園寺よりもチャラチャラしているイメージがある。
……西園寺が一回紹介してくれたけど、アイツ俺のこと見下してる感じ出してて嫌だったんだよな。
俺の思い違いかもしれないけど……
「なになに!? やっぱ気になんの?」
望月は何故か楽しそうだ。
「あ、うん。気にはなるけど……」
多分望月が思っている理由とは違うだろう。
「じゃあさ、行ってみる?」
「それはそれでなんか悪いような……」
「そんなこと気にしなくていいんだって! 早く……」
移動しようとした望月の動きが止まった。
「どうかした?」
「私、どこで告られるか知らなかった」
……この人は馬鹿なのか?
「……私、知ってる」
それだけ言うとついて来いと言わんばかりに三鷹は歩き始めた。
「さっすが、雪! 頼りになる!」
どうしても気になってしまった俺は三鷹と望月について行くのだった。
「……まだまことしか居ないみたいだね」
やってきたのは体育館裏だった。俺たちは植木に隠れながら小声で話し合う。
「そうだな。鳴海が呼び出したのに来てないみたいだ」
「そりゃ、告白前だから気合い入れてんでしょ」
「そ、そうなのか?」
そういうことなのか。告白したことないし、されたことないから分からなかった。
「当たり前でしょ。そんなんあたり……ごめん」
何かを察した望月は謝ってきた。
「……逆に辛いからやめてくれ」
「……気にすることはない」
すると三鷹が俺の肩に手を置いてサムズアップをした。
「もしかして三鷹さんもそういう経験あるの?」
ちょっとした出来心で聞いてみた。望月とは違い関わりずらい雰囲気のある三鷹なら俺と同じ側の人間かもしれない。
「……………」
「せめて何か言ってくれませんかね!?」
質問して後悔してしまった。
「ばかっ、声がでかい」
望月に言われてハッとした。恐る恐る西園寺の方をみるが気づいてないようだ。
……助かった。
「っ! 海斗が来た」
望月の声に合わせて、前を見ると普段より髪の毛が決まっている鳴海の姿があった。
「呼び出したのに遅れちまってごめんなー!」
ニカッと笑いながら謝罪をする鳴海。……イケメンが笑うと絵になるな。俺も笑顔の練習してみようかな。
「ううん。大丈夫だよ。……それで話って?」
「実はさ、まことちゃんが転校してきた時からまことちゃんのこと好きだったんだ! だから俺と付き合ってください!」
頭を下げて右手を前に出す鳴海。
なんだこれ。告白ってこんなストレートにするものなのか。なんか見てるこっちが恥ずかしくなってきた。
いくら興味本位でも見るんじゃなかった。
「……ごめんなさい。私は鳴海くんとお付き合いできないの」
「うわぁ……」
そして西園寺もバッサリ言ったな……お前も同じ男なら告白する勇気がわかるだろ。もうちょい優しくしてやれよな。
横で望月が可哀想なものを見る目で鳴海を見ている。多分俺も同じ視線を鳴海に送っているのだろう。
鳴海に知る術はないが、西園寺は少し前までクラスメイトとして一緒にいた男なのに。しかも告白して振られるなんて……
「あちゃー、振られちゃったかー」
えっ。めっちゃケロッとしてるじゃん。
「……………」
西園寺も驚いているようだ。
「一応参考までに聞きたいんだけど振られた理由ってまことちゃんがいつも一緒にいる……なんだっけ? 平か。平がいるからなの?」
「……冬馬は関係ないよ。私の問題だから」
ふー。良かった。西園寺が否定してくれたお陰で変に陽キャから恨まれることは無くなっただろう。
「ふーん。そっか。でもまことちゃんも付き合う相手は選んだ方がいいと思うぞー?」
「……それどういう意味?」
「平だよ。だってアイツゲーム好きでオタクだし、この前誠に紹介されて喋った時なんてあっ、とかあーとかそのなんて言って吃りまくってたんだぜ? まことちゃんにも見せてあげたかったなー! キモ過ぎて笑えると思うぜ」
……見るんじゃなかった。
こんなひどい飛び火あるか。西園寺に告白してただけなのに、俺の悪口って……
普段周りからどう思われているかなんてあまり興味がないけど、陰口を聞くのは流石にしんどいものがある。
「……私は嫌いじゃないから」
「まあ、元気だしなって……荷物持ちとしては便利だから!」
2人が慰めてくれた。ってまて望月お前は俺のことを馬鹿にしているのか?
するとパァンと乾いた音が聞こえた。
音の正体をみて驚いた。西園寺が鳴海をぶったのだ。
「それは勿論知ってるし。でもそんな頼りないところも含めて冬馬だから。二度と私の前で冬馬の悪口言わないで」
西園寺が普段の時からは考えられないくらい低い声を出している。
「ヒュー」
隣で望月と三鷹が脇を肘で突いてきた。
恥ずかしいからやめてほしい。それと西園寺がそこまで言ってくれたのは嬉しい。
「ハハッ、なにそんなに怒ってんの? もしかしてまことちゃんってアイツのこと好きなの?」
「……二度と私に話しかけてこないで。勿論冬馬にも」
ヘラヘラと笑う鳴海を置いて西園寺はその場を後にしてしまった。
「……くそっ! なんだよあのアマ! 可愛いから調子に乗りやがって!」
鳴海は壁をガンっと蹴った。
性格変わりすぎじゃない?
「うわっ、アイツ素はあんな感じなんだ……」
「……私は知ってた」
ドン引きしている望月と何を考えているか分からない三鷹。
「本当怖いな」
あんな感じで俺のところに来たらビビって漏らしちゃうかもしれない。
「アイツ女子人気も高いし、他の子にも警告しとかないと……」
「……ここに居ても意味がない」
「……そうね。見つからないように帰るわよ」
「おう」
俺たちは鳴海に気づかれないようにこの場を後にするのだった。
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