第18話

 ◇ ◇ ◇




「凄い……!」


「だろ」


 晴天の下、二人は昨日の事件現場に向かった。


 昨日建物が破壊され焼野原になっていたそこは、緑が生い茂り、建物も何事も無かったかの様に復元されていた。


「結構な規模で破壊されていたと思ったのですが」


「事実そうだったな。でも救急隊が優秀でさ、何かあっても大体一晩ありゃ直してくれる」


 そう聞くと魔法使いのエキスパートが集まっているみたいで少し尊敬する。しかしその分、やはり魔力の消費が激しいのではと不安になる。


「救急隊は政府が運営しててさ、第一から第三の各都市ごとに派遣されてる。ちなみに政府の本拠地は第一都市にあるな」


「それ自体は凄いし安心できますが、こんな大規模な魔法を使うなら負の魔力も溜まるのではないでしょうか」


「救急隊員が“仕事中に”堕落になった事件は、“公表されている情報だと”今まで一件も無い」


「なるほど……?」


 でも、それじゃまるで政府側が隠して……。


「そそ。そういうこと。国を統治してる政府が派遣してるんだ。そいつらが派遣してる原因になっちゃ本末転倒だよなぁ」


 なら、もし堕落になってしまったのならその場で処理されるのだろうか。街を一晩で焼野原から復元できるんだ。きっと人一人殺すなんてことは簡単にやってのけるだろう。例えそれが堕落になったとしても。


 加えて、もし自分が政府側の人間だったらどうするだろうか。一定以上働いた隊員は堕落になる前に処理して替えの人間を用意する、なんてこともできそうだ。


「いろいろ想像はできるが、実際のところは闇の中だ。考えるだけ無駄だってこった」


「うう、私、あまり良くない想像をしてしまったかもしれません」


 すると彼はにやりとしてクオンの耳元に顔を近づけた。


「案外間違っていないかもだぜ?」


「!?」


「へぇ、お前も結構酷いこと考えるんだなぁ」


「ま、まさか」


「そう、そのまさか」


 彼の息が耳に当たる。体が震える。なぜか緊張してしまう。彼に――ファルに心を読まれている。


 どうにかして言い訳しようとしたとき、彼はばっと体を離して、いたずらが成功した子供の様ににかっと笑った。


「まさかの冗談でしたー! どうだ? 驚いたか?」


「へ?」


「ん?」


 彼はきょとんとした顔で見つめてくる。あれ、心を読まれたんじゃなかったのか。


「あ、今『心を読まれたんじゃなかったのか』って思ったな?」


「やっぱり読まれてた!?」


「いや、今だよ今。え、何、どんなこと考えてたの」


「言いません」


「マジで結構酷いこと考えてたのかー。そうかー。知りたいなー」


「言いませんっ」

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