第12話

 こうして、服や下着に日用品等を一通り買い終えた。今私はフリルのついた白いワンピースを着ている。胸元にさげている黒い魔法石がアクセントになっていて、清楚な感じに仕上がっている。


 クオンが驚いたのは、配達店に買った物を持って行くと、魔法で家まで転送してくれたことだった。おかげでクオンは今手ぶらである。


「最後は武器屋だな。これもお前に合ったのを注文するから完成するまで日数かかるけど」


「それでもお願いします」


 魔法が使えないのだ、物理でなんとかするしかない。


「いらっしゃっせー。お、ファルさん。お疲れ様っす」


 若い男が受付にいた。彼はクオンを見た途端目を輝かせた。


「この美少女がファルさんの仕事仲間っすか! いいっすね闘う女の子!」


 うおおおお! と、一人で燃え上がっている。


「こいつ、いつもこんな感じだから気にすんな」


「はぁ……」


 なんだかデジャヴを感じる。頭を過ぎるは美容室の……。


「全体的に体細いっすけど、力はあるんすか? 腕力とか」


「ちょっと俺の剣持ってみ。片手で」


 ファルから剣を手渡されたので、言われた通りに片手で持ってみる。特に問題なく振るうことが出来そうだ。


「俺のを片手で持てるなら力あんじゃねぇ?」


「そっすね。振って見て下さい。あと突いたり」


 適当に振ったり突いたりしてみる。


「…………」


「…………」


「な、何か言って下さいよ」


「……いやぁ」


「ヘタクソっすね。不格好というか」


「構えがなってないな」


 全身の血が頭に上る。顔が真っ赤になるのが分かる。剣をファルに押しつけ彼の背中に顔を隠す。


「醜態を晒してしまった……」


「だ、大丈夫だって。皆最初はそんなもんだ。構えとか基礎的なことは俺が教えるし」


「そうっすよ。最初がどんなに酷くても、慣れていけばなんとかなるもんっす」


 グサリと心に刺さる。二人にフォローされているが、その内容で本当に自分の剣の振り方が酷かったのだと思い知らされる。


「私もう帰りたいです」


「だめ」


「力はあるみたいだし、突きの方が得意そうっすけど、実際どうっすか?」


 背中に顔を埋めたまま頷く。


「突きの方がやりやすかったってさ」


「ならレイピアとかいいんじゃないっすか? 刺突武器な上斬ることもできるし。こっち来て下さい。ファルさんの武器より軽くて振りやすいと思うっすよ」


「うぅ……」


 泣く泣く店員の前に立つ。そして店にあるレイピアを一本持たされた。


「……軽い。さっきのよりこっちの方がいいかも」


「そうっすか。一応他の武器も試してみましょう」


 その他数種類の武器を試してみたが、結局レイピアに落ち着くことになった。


「ではレイピアで。何かご希望の装飾とかあるっすか?」


「とびきり綺麗なので。こいつが持ってて違和感が無いような」


「了解っす。お嬢ちゃんからは?」


「扱いやすいのでお願いします……」


「それも了解でっす。超いい獲物を造ってみせますから」


「貴方が造るんですか」


「そっすよー。これでも腕には自信あるっす!」


 彼は力こぶを見せてくる。若そうな見た目だったので受付の人だと思っていたけど、武器も造れるなんて。口調は軽い感じだが、結構凄い人なのかもしれない。


「俺のこの剣もこいつに造ってもらったやつだから。腕は確かだぜ」


「そんじゃよろしく」と、代金を受付に置いてファルは店から出て行った。なんだか凄い額のお金を置いていった気がしたけど、ここは何も言わずに甘えておこう。……下手なことを言って背負わされたら大変だ。彼に限ってそんなことはしないと信じているけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る