第4話 闇のカードなので闇堕ちに対して真面目に取り組んでいるはずだった(過去形)
なんかその場の勢いで主人公から引き継ぎバトルを終えた感想としては――《死餓龍 トウテツ》、戦うの下手くそだった……。
相手モンスターの戦力を自分の手札の枚数分下げて、その効果で戦力が0になったら問答無用で破壊……な格下狩り専門みたいな効果持ってたし仕方なかったのかな。
いやでもさ? つよつよ敵として出てきたのならアニオリぶっ壊れ手札補充カードもっとモリモリ使って「どのモンスター出してもすぐに破壊されてしまう……!」「フフ、コレコソガ死餓ヨ……」な展開あっても良かったんじゃないかなって思いました、まる。
……現実? 最初っから「やーいクソカス弱弱人間くん見てる〜? 君のプレイングのせいで君のモンスターくん達苦しんでま〜す♡」って煽りムーブしてたよ。お前さぁ……。ギリギリ戦力が残っているから破壊効果あんまり使えていないということを煽りで誤魔化すな。
【
――文句言いたいのはここだけじゃない。「グアアア嫌ダ死ニタクナイーッ」と力の差を分からせ完了した後でリモート会議みたいに邂逅した他の【
煽りがハモるという初めての体験しちゃった。一言一句同じ煽りってどういう事なのか。打ち合わせしたの? やーいボキャ貧ドラゴンどもめ。
ん? じゃあもしかしたら自分も煽りカスの才能があったりするんだろか? あいつらと同じとかめちゃ嫌だな……。
『受け入れ難き……』
……うん。別のこと考えようか。
自分の手で主人公を闇堕ちさせたいからと他のやつに機会を奪われないようアレコレした結果、その周囲からの印象が「なんだかんだ言いながら主人公に絆された主人公すきすきドラゴン」に固定されてしまった今こそ問おう。
――自分は本当に闇堕ちに真摯に取り組んできたのか?
多分……してないよな……。力が欲しいかムーブしたらコロッと堕ちると思っていた過去の自分、もっとちゃんと闇堕ちに誘うような言葉使え。ファーストコンタクトからすでに手遅れだぞー。
でも言い訳だけはさせてほしい。良い子の全年齢アニメだから負けそうな時に声かけたら闇堕ちするだろうと思ってたんだよ。闇堕ちに対する解像度が低い? その体たらくで【闇】陣営なのは詐欺? グワーッそれを言われたら何も反論が出来ないからやめてくれイマジナリー評論家。
「死統龍。死統龍……死統龍……? いるんだろう? 何故姿を見せない? まさか死餓龍のことを気にしているのか? すまない……俺がもっと凄惨な倒し方をしていれば良かったのにな……」
一言も言ってないが?
返答は心の中だけで済ませる。現在適当に闇で異空間作ってそこに引きこもりなう、なので。
いやね、デッキ異世界でね、《
知らない人に声かけられるのって……苦痛! 主人公と顔が一緒でも中身が全然違うので別人カウントです。ヤンデレとかそういう方面に片足突っ込んでそうな言動は知らん。なんなのコレ。
というか! なんで【闇黒忌士】まだ主人公のデッキに居座ってるんだ! そのせいで主人公が【光】と【闇】の混合デッキ使う羽目になってんじゃねーか! そういう展開はラスボスとの戦いでなるもんでしょうが!
……ん? ということは(デッキだけに絞れば)闇堕ちは現在進行形……? なんやかんやで闇堕ちチャンスが発生した……?
「あの姿、そしてあの盤面……俺とお前が初めて出会った時のこと、忘れてないんだろう?」
何一つとして知らないこと言われても……あの姿になったのって「流れでいい感じに人型になれそうだし主人公闇堕ち予想図を現実に出力してみよ〜っと!」しただけだからそんな深く考えなくてよろしいんですけど。
「ハハ……俺がもっと早くに【闇】の力を受け入れていたら、皆を失わずに済んだのにな」
独白始まってる。主人公と同じ顔と声で語るから自分の記憶に一欠片も存在しない回想シーン始まっちゃう! 助けて!
「俺があの時、初めて【闇】を……《滅びの担い手 ガルーダ》とその使い手を【光】で滅したあの瞬間から、俺の未来は決まったんだろうな」
《滅びの担い手 ガルーダ》? 聞き覚えが……ああ、自分のデビュー戦の犠牲になったかわいそうなとりさんの名前。どうして今その名前を出したのか。
「お前が現れることの無いまま、俺の力だけで【闇】を倒せたことで、【光】は暴走を始めていた」
……うーん。この謎独白が真実だとすると主人公が二人いることになるんだけども。並行世界とかドッペルゲンガーとかタイムスリップ? まあカードゲームアニメだし無くはないか。
…………なんで納得する理由が複数あるんだろう。
カードゲームってこわいね。
「日に日に強くなる【光】を糧とし、【闇】をこの世から消し去らないと、その思いが胸で燃え盛り続けた戦いの中。追い詰められた【闇】は何としてでも生き延びようと俺の周囲の人々を人質として使うようになって……俺は……何も思わなかった。攻撃を少しもためらわなかった。ライフが尽きると同時に道連れとして消える皆へ駆け寄らなかった。助ける方法を探さなかった。――人であることを捨て、ただ【闇】を倒すモンスターとしてそのまま戦い続けた果て……俺は皆を殺したんだ」
はぁ!? 主人公闇堕ち完了済み!? 内容からすると正確には【光】堕ちだけど!
じゃあ何? 自分が闇堕ちに対して無意識のうちに積極的になってなかったのってもしや既に成功例が存在しているから、だったの!?
「【
戻ったのかぁ。
正気に戻ってコレなのかぁ……。
「正気に戻ったことで荒れ狂う【光】の制御が出来なくなり、お前の持つ静かなる【闇】を使い力のバランスを取った結果、ほぼ全ての【光輝士】は【闇黒忌士】へ生まれ変わり……残った【光輝士】は《光輝士団長 ヘブンス》とその進化系だけだった」
《光輝士団長 ヘブンス》が自分を知ってそうだったのはそういうことかー。……この数分で謎が解けたり増えたりして大変。
「長い戦いの果て……三体の【
わあ敵が増えた。ごっつい名前してるしそいつがラスボスでいいのかな。
「この世界は奴の手で未来を閉じられ、【闇】の被害が大きいほど奴の力が増すゲーム盤に作り変えられていた。【闇】を消してきたため邪魔者と判断された俺達は奴の前に手も足も出ないまま、次の世界に痕跡が残らぬよう消されるはずだったが――お前がこれまでの思い出を代償として発揮した力により、俺と共にいた者だけは書き換えの影響から逃れ……そうして世界が再構築された。倒したはずの【
ちょっと待て今コイツなんて言った。
つまりこの世界って……引き継ぎで始まった2周目なの!?
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