第3話 闇のカードなので主人公の体を奪ったりするはずだった(過去形)
『愚カデアル』
相手の場に現れた《死餓龍 トウテツ》。その前に膝をついているのは光咲聖也――【光輝士】を操る
だが【
『人ナド簡単ニ壊レル。弱イモノヘ何故ソレホドマデ固執スル? 愚カナ同胞ヨ』
《死餓龍 トウテツ》が声をかける相手は人に力を貸している【
聖也のデッキから黒いモヤが滲み出し、竜の姿へと変わる。
『煩い』
突然の呼び出しでどこか不機嫌なようだが、それに構うことなく《死餓龍 トウテツ》は大仰に語る。
『オオ、ナント惨メ! 弱キ者ニ首輪ヲツケラレ負ケルナド惨メトシカ言イヨウガナイ。今カラデモ遅クハナイ、ソイツヲ殺シ此方ニ来イ。共ニ蹂躙ヲ楽シモウデハナイカ』
「ヘルシャーロイデ……!」
それは聖也が恐れていたことの一つ。今は人の味方であるが、同じ【
不安そうに、痛みを堪えながらも聖也は《死統龍 ヘルシャーロイデ》へと視線を向ける。
『――断る。下らない提案に我らの時間を取らせるな小物』
龍は龍の紡いだ言葉を丸ごと鼻で笑った。小物、と呼ばれた怒りからかぶるぶると震える《死餓龍 トウテツ》。
『馬鹿ニスルナ! 我ハオ前ニ封ジラレタ時ヨリモ力ヲ得テイル! モウ良イ! 光ゴト粉砕シ、我ガ糧ニシテクレルワ――!』
「ハ、あ――」
息が詰まる。龍の放つ怒号が、プレッシャーが呼吸の邪魔をする。
『闇を求めよ、聖也』
《死統龍 ヘルシャーロイデ》が前へ歩み出、翼で聖也を龍の視線から隠す。……ほんの少しだけ体が楽になる。
『恥知らずの同族など見るに耐えぬ。しかもお前を狙うなど愚かにも程がある。この戦い、我が引き受けてやろう』
闇の形が変わる。龍から、人間に。聖也が装着していた指揮盤は《死統龍 ヘルシャーロイデ》の手の中に。
「我が下に再び集え、【闇黒忌士】よ! 【光輝士】らとの戦線は今蘇る!」
その声と共に指揮盤が黒く染まる。どこからかフレームが黒いカードが、【闇】によるモンスターがデッキへと追加される。……無茶苦茶だ。戦っている途中でデッキの変更、など。だが指揮盤はエラーを起こしていない。相手である龍が文句を出す気配もない。
それだけの力を持っているのが《死統龍 ヘルシャーロイデ》……と言うことなのだろう。
「宣言してやろう。このターンで終わりにする」
どことなく聖也に似た姿へと変化した龍はニヤリ、と邪悪に笑う。
『何ィ……!?』
TURN CHANGE
闇の召喚者
↓
死統龍 ヘルシャーロイデ 手札0→1
「我のターン。ドロー。準備段階に墓地の《光輝士の残光》の効果が発動、墓地の《仁義の猟犬》が手札に加わる。……では行こうか。手札のモンスター、《仁義の猟犬》を墓地に送り手札から《
現れたモンスターは【光輝士】とは真逆。傷だらけの漆黒の防具を纏い、失われた肉体の代替品として闇が人型になり動いている。
光を持たない存在であるが、ただ一つの例外として残された爛々と輝く目には、【闇】への殺意が満ち溢れていた。
「召喚に成功した《
それは、世界に対する一時的な変更。
「《光輝と暗黒の掌握》の効果によりこのターン、【光輝士】と【闇黒忌士】は同じものとして扱われる」
「なっ……!?」
聖也は愕然とする。本来ならば相容れない二つを一つにし、無理やりシナジーを生み出すカード。
「はは……何でもありにしても程があるだろ……!」
「《
《
《万能勲章》
《
《魔剣 ゲイル・ブレード》
「【闇黒忌士】があるため墓地へ送られた《
闇ではなく、光が場に降り注ぐ。
「リベンジのチャンスだ。疾く来い、《光竜輝士団長 ヘブンスロード》!」
『ハァアッ!!』
前のターン、《死餓龍 トウテツ》により戦闘破壊された光の戦士が舞い戻る。
「《光竜輝士団長 ヘブンスロード》の効果! 墓地の【光輝士】を3体デッキに戻し、デッキから【光輝士】を特殊召喚する――クク、ここまで言えばどうするかなど分かるだろう? 我は《
その武装は《光竜輝士団長 ヘブンスロード》と瓜二つ。違うのはその鎧が漆黒であることと――。
「俺…………?」
――顔が光咲聖也そのものである、その二つだけ。
『ア、アァア――! 貴様、貴様貴様貴様――!!』
並び立つ姿を見た《死餓龍 トウテツ》が怯え始める。
「クク……今更後悔しても遅いぞ、愚か者よ」
――やっべ。主人公に何言ってんだテメーオォン!? って啖呵切ったら初めてのデッキ回すことになったけどなんかうまいことエースモンスター出せたわ。デッキに触る効果多いからモンスターの効果チラ見できてなんとかなった良かった。
……にしてもなぁ、《
これは……うん……主人公の闇堕ち判定…………していいのかな……?
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