後日談

カミガーナー逮捕から数日が過ぎた。慌しかった王宮も今ではすっかり落ち着きを取り戻している。

 カミガーナーはフレイル暗殺の容疑者として裁判にかけられる事になった。しかしフレイルが力の限り殴りつけたため重症で今だに病院で治療を受けている。

 その他にもカミガーナーと共謀して暗殺に関わっていたとされる者も一斉検挙された。貴族に兵士にメイドと様々であった。

 しかし毒を盛ったであろうメイドはカミガーナーが倒された後すぐに行方をくらまし今だに見つかっていない。カミガーナーが推薦したメイドなので経歴も何もかも出鱈目であった。今もなお彼女の行方を追っている。

 そして関係者の捜査の他にもう一つ捜査する事があった。

「カミガーナーが変身したのはスキルじゃないんですか?」

 オーズはてっきりカミガーナーが化け物になったのは自身のスキルの力だと思っていた。そうでなければおかしかった。

「いやカミガーナーはスキル持ちではない。それにあれほど強力なスキルなら何処かで知る筈だが誰も聞いた事が無いそうだ」

 ソニアは捜査状況を話してくれたが変身については何一つ情報が無いようだ。つまり何かしらの方法によってカミガーナーは化け物に変身した事になる。

 三人はカミガーナーが変身する前に内ポケットから何かを取り出し食べたのを目撃している。その変身できる物は何なのか、そしてその出所が捜査の対象であった。

「じゃあカミガーナーから聞き出すんですか?」

「そうなる、しかしカミガーナーの怪我は酷く今だに喋る状態じゃない」

 ソニアはオーズをじっと見た。オーズは俺のせいじゃ無いと首を振りフレイルを見た。

「私に逆らった当然の罰ね、どうせ死んでないんだしそのうち聞けるでしょ?」

 フレイルは優雅にお茶を飲んでいる。カミガーナーが捕まり一先ず暗殺の危機を回避した事によりフレイルは生き生きと暮らしていた。

 何より玉座の間が戦闘によって破壊された事によりフレイルの仕事である貴族や市民からの謁見が中止になり暇ができたのだ。

 この後の予定も無くフレイルは自由を謳歌していた。

 オーズはこの平穏がいつまでも続けばいいと思っていた。フレイルがあんな危険な真似をしないでお茶を飲みながら談笑する、そんな優雅で平穏なお姫様らしい日常を。

 そうでなければ確実にオーズは武器として扱われる。フレイル愛用のハンマーがそこに有っても意味なくオーズを振り回すそんな気がしてならないのだ。オーズ自身にはダメージは無いが精神的ダメージは凄まじかった。

 フレイルはオーズを護衛騎士に任命させる時にこう宣言した。

 私の剣となり盾となりその命を私に捧げのよ、と。

 オーズ自身が鈍器になるのは宣誓の文言に入っていなかった。

 ――これは詐欺でないか?

 オーズは不満げな表情でフレイルを見た。

「なに?兄ちゃん?」

 フレイルは笑顔であった。オーズはその笑顔を見るとどうしても許してしまいそうになる。苦しい生活をさせてしまった前世アカリ、暗殺に怯えながら暮らしているフレイル。どちらもオーズにとってかけがえのない妹であった。そんな妹の笑顔を守る為なら何でもするそんな覚悟もある。だけど鈍器代わりにするのは止めて欲しかった。

「そうだ兄ちゃん土下座しながら火で炙るってどう?物理攻撃以外にも耐性があるかも、兄ちゃんの可能性も広がるから」

 フレイルは無邪気な笑顔で悪魔のような事を思いつきを喋った。

 オーズは笑った。

 ――やっぱりなんでもは駄目かな

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る