本文 5 (映画館についての短編、ショート・ショート【城】、BADに入る)
………
朝、と言うより昼。ここにそう書いているという事は次の日も飽きずにこの【バッファロー。その思念。】についてガリガリ書きなぐっていくことを続けているってこと。饒舌体とかそう言うのではもう誤魔化せない域に突入中である。
こんなのもう、ただお喋りな奴が無軌道にしゃべっているだけではないのか?
バッファローと何が関係あるのだ?
KACやる気ある?
自問自答が続く。
ここ一週間、熱はないが鼻風邪をひいて外に出ていないのでフラストレーションが溜まっているのだ。それをこのメタフィクションSFという名ばかりのエッセイみたいな無政府文章で吐き出して発散している。だがそれは文学やメタフィクションSFに対して失礼ではないだろうか。メタフィクションSFにも縦の導線と言う奴があるはずだ。この物語においては序文と最初の本文あたりがまだその体裁を守っていたと思う。だとすれば今、この本文5と言うのは伸びに伸びきった導線すらも失われた蛇足問う事にはならないだろうか。
そう在ってはいけない。そうはさせない。ということで今回はメタフィクションSFとしてのダイナミズムをここに発揮したいと思う。ここでビシッとメタフィクションSFでございますよとポーズを取れば三島由紀夫以外は怒るまい。
―――
というわけで私は外に出た。実際に外に出ているかって?
このカクヨムというサイトはスマホでも執筆できる。だから外に出てこの文章を書き続けることは可能だ。では実際のところは?
それは言わない方が面白いだろう。メタフィクションSFは作品内世界と作品外世界が絶妙なズレの中、交じり合うのが面白いのだ。読者と作品は既に大きな壁に阻まれている。演劇と違い小説は第四の壁と言ってもリアルタイム性はないので更なる壁がある。……いつかリアルタイム連載なんて言うのが生まれればその壁もかなり消し去れるだろうが、その頃にはAIがメタフィクションSFとかを書いているのではないだろうか。そうなると面白いのにな。
ああ、とにかく、私は外にいる。
作品内世界の【外】というのは、まだ規定されていないので真っ白な原野だ。いや、今真っ白な原野になったと言える。草木の生い茂る森であると言えばそうなるし、実はまだ部屋から出ていないよーんと言えばそうなる。じゃあ今回は映画館であると規定しよう。
映画館は古く、そこそこの大きさがある。私の小さなころからやっている映画館だ。作品内世界の映画館と言う部隊がこうして規定される。今生まれたばかりなのに私の小さなころからやっている映画館がここにある。
私はそこで、毎週日曜日には映画を見る。何を見るというのはあまり決めていない。別の目的があるのだ。
私は映画の券を買い、3番のスクリーンへと向かい、買った席に着く。ポップコーンはたまにしか買わない。そして劇場内が暗くなり、銀幕に映像が投影される。
私は映画を見る。
私は二時間ほど映画を見て、まあまあ面白かったな、などと思いながら劇場を出て、トイレに行った後、映画館を出る。
そして、ため息を吐く。
今日も、また、あの人には出逢えない。
―――
中々簡素ながらよくできた。もう少し整えれば結構読める文章になるのではないだろうか。
またまた何か思いついた。
―――
今度は私は、谷の中にいる。霧がかかり、日の光は乏しく、夜の様に薄暗い。そう言う場所にいる。両側の山は急斜面で、登れそうにはない。岩肌が露出した谷合。幸いにも歩く場所の幅は非常に広く、十数メートルほどはある。
私は薄暗い中を歩いて行く。
もしやここは洞穴の中なのではないか。
そう思えるほどに、薄暗い。
だが、私はここが谷間であり、今は昼間であることを知っている。
だからこそ余計に不気味だ。
私がしばらく歩くと、開けた場所に出る。だが、暗さは変わりない。
暗がりのなかで開けた場所に出るのは、余計に不気味なことである。選択肢が広がり自由になったはずなのに、余計に不自由で、抑圧された、恐怖を感じる。
私はしばらくまっすぐ歩く。
すると目の前の靄の中に、大きな石畳の壁が出現する。
近づいてみると、それは、おそらくは城だとわかる。
見上げても城壁の果ては霧の中に隠れ、頂点は見えない。
私はその石の壁を伝って右の方へと歩き出す。
少なくとも人間の痕跡はある。
私は少し、安心したのだ。
そうして、壁伝いに右へ歩いて行くと、しばらくして門に出くわした。
その門は5メートルはあろうかという巨大なもので、鉄の柵を降ろして、閉ざされている。柵は細かく、隙間から向こうを見るのがやっとであり、私の頭など、策の隙間には絶対に入らない。精々指が二本入るかという程度の隙間だ。
門の奥はここよりもさらに暗い。だが、遠くの方で松明か何かの灯りが見える。
人はいるのだろう。
私は叫んでみる。
「おーい、だれかぁー、開けてくれぇー」
声は想像以上に響く。
だが、何の反応もない。
暗い城は私の声をただ反響させるだけであった。
蝙蝠の飛び立つような演出もない。
誰かは居る。だが、ここにはいない。
私は、定期的に、叫ぶ。
「おーい、だれかぁー、開けてくれぇ―」
その度に、虚しい響きが、この場所に響くだけである。
―――
ウン。ここで書くに相応しいものができた。だらだら書いていけばなんか思わず良いものが書ける。なんか、そんな感じだ、なんか。
作品について筆者がづかづか出てきてアレコレ言うのは好きではないので、この文章について言うのはやめにしようか。
というか私はさっきまで城の門にしがみついて叫んでいたのだ。おかげで喉が痛い。こっちは風邪をひいているんだぞ。それだってのになんで叫んで、しかも誰も来ないような目に遭わなきゃならいないのだ。ふざけやがって。徒労だ徒労。何か、こう、報いというものはないのか。まあ、無いか。人生報われる方が奇跡的だ。期待したところで何かを得られることはほとんどないのだ。
あーあ、溺れ死にたい。なるべく長く苦しんで。
さ、BADに入ったところでそろそろこの文章もお開きが近づいてきた。毎回こういう区切りをつけるのもどうかと思えてきたな。次は一丁、こうした区切りなしで何話分か連続させていってもいい気がする。そうしようかな。どうしようかな。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます