本文 4 (IF世界史SFの短編、パルプ小説とラノベの関係)
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間髪入れずに四つ目の本文になだれ込む。実はこの【バッファロー。その思念。】の一話目を書いている時から、ずっと色々なアイディアがムクムクと湧き上がっていたのだ。それを一つ一つ、覚えている内に活字化していきたい。というか、忘れても中途半端な形でここに置く。異論は認めない。いいね?
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まず、第一にやってみたかったアイディアと言うのは、アレだ。『全然関係ない小説の中で全然関係のない別の小説が始まる』という奴だ。全然関係ないものが全然関係なく始まる。……だがよく考えて見れば今、全然関係ないという修飾語を入れてしまった時点で関係性があるのではないだろうか? いや、いや、そんなのはどうでもいい、まずはとにかくやってみるんだよ。
『本間修一郎は、悩んでいた。
彼は1982年に京都大学経営学部を卒業し、直ぐに親のコネを利用して、この『財閥ホールディングス』の経営戦略本部へと配属。以降も順調な昇進街道を進み、遂に、1992年勤続10年目にして【社長】の肩書を得るに至る。だが、その管轄は経営戦略本部ではなく、ホールディングスの子会社である【松山化学興産】であった。
尤も、財閥ホールディングスという南日本において戦前より政財界を牛耳るメガコーポの科学研究を抑える巨大な子会社の社長という地位は、経営戦略本部における地位よりもずっと上であり、大抜擢と言えるものであった。だが、彼にはこの仕事を受ける際に、大きな心配事があった。
1991年に始まった第二次アメリカ内戦における東海岸とサンフランシスコの社会主義陣営の優勢と、冷戦構造の変化による、北日本(日本人民民主共和国)とこの南日本(日本国)の戦争である。
太平洋戦争終結以降アメリカ・イギリスとソビエト連邦によって南北に分かたれた日本は南北の紛争状態が続いている。冷戦下においては互いに米ソの核の傘の下で牽制しあう動きが為されていたが、アメリカの内戦による崩壊によって既に均衡状態は崩れ去った。内戦の日、当日には北日本の赤軍が南日本の飛び地である北東京を占領。そのまま東京全域に軍を展開し電撃的に侵攻。相模川の国境部が続々と突破され、自衛隊は敗走を続けた。
赤軍はそのままの勢いで京都への進軍を敢行。早期決戦を急いだが、関ケ原周辺において停止。硬直状態が続いている。
おかげで元々停滞していた南日本経済は大打撃を受け、社会保障の削減を続けていたこともあり街ではストライキが多発、今では戒厳令だの戦時緊急事態法案だの臨時徴兵法だのと政府が急速な対応を進めている。
そんな中での財閥ホールディングス・松山化学興産の社長就任というのは怪しげな政治が働いているように、彼には思えた。
松山化学興産は、大戦時の化学兵器、生物兵器研究者を財閥が引き抜き保護した会社ということで知られており、一説には現在においてもそうした化学兵器を開発しているとのうわさがある。そしてそれは事実である。
その事実に加えて、先の【日本内戦】の両軍の停滞……そして今回の人事、本間修一郎はこの大抜擢の意味を理解していた。そして、彼はそれを受け入れた。
だが、彼は、今、目の前の【財閥幹部会議通達】の資料を見て、悩みあぐねている。
『生物化学兵器の自衛隊への配備』『生物化学兵器開発の加速と、人体実験の再開』その二つが、その長い指令書の内容であり、彼が判を押す事で、この会社で巻き起こる事態の詳細である。
彼は、己のちっぽけな良心に悩まされている。
立場上、彼がNOと言ったところで何かが変わることは、まずないだろう。
すぐに彼以外のその椅子に座る候補者が、彼の左遷後にやってきて、この紙と似た紙に、良く内容も見ずに判を押し、全てが進む。その男はきっと、戦後、バッシングを受けながらも良い天下り先に落ち着き、静かな老後を過ごすのだろう。
彼は己の進退をそこに見る。
そして、笑う。
何が、社長だ。この財閥ホールディングスの会社の中で、【社長】という肩書は上層部である【財閥幹部会議】の傀儡を指すだけの言葉だ。……ちっぽけなものなのだ。子供の頃のあこがれは、こんなにも。
彼はそう思いながら、判を押した。今後、百年に渡る罪過が、ここに始まったことを、彼は何となく察している。』
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なんかいい感じに書けたな。これからもこの世界設定の小説は断続的にここに投下していこう。なんかいいじゃん、WEB小説っていうか、パルプ小説みたいでさ。
そうそう、私はパルプ小説が好きでね。特に『野蛮人コナン/英雄コナン』が好きなんだ。あのバラバラな連載形式に、主人公コナンの性格の悪さ、そして物語、どれもダイナミズムが感じられる。ウィアード・テイルズのようなパルプ誌を、いつか本物を集めたいと思っているし、作りたいとさえ思っている。
このWEB小説だって、源流はパルプ小説だろう?
ライト文芸の源流にはいろんなものがあるが、その大元というか、参考元の一つがパルプだとおれは睨んでいる。実際連載形式で自由度が高まるとパルプの手法が見られることもある。順不同の連載とか、短編連作の時系列が滅茶苦茶とか。【ニンジャスレイヤー】なんかは敢えてパルプ的な連載形式を1部、2部でやっていたみたいだし。
他にもいろんな没案とか、これから書こうかなとアイディアだけあるものとかも乗っけていきたいなぁ。心にあるよしなしごとをスルスル書いていく感じになっている。……それは本当にこの【バッファロー。その思念。】という作品の文章としてこの世界に公開してよいものなのだろうか?
不安になってきた。私はアドレナリン噴射しまくってゴリゴリ執筆していっているが、何でも書けばいいってもんでもない。だが、もうこの文章のコンセプトを正確に見出しているものなどいるのだろうか?
読者層も、目的も、やっていることも意味不明。書いていることも、ちんぷんかんぷん、なら何をやったっていいじゃないか。
自己肯定と自己否定。二律背反、だっちゅーの。いつもこの始末だ。胡乱な物書きであることは自覚しているが、毎度毎度、気が滅入る。おれはどこまでこれを書き続けられるのだろうか。多分皆が思っている以上に多くのことを書くだろう。いや、書いて見せよう。だからどこまで行くのかと、好奇の目でこの文章を見てほしい。さあ、もうすぐ終わる。だが、どうせすぐに次の話だ。
(続く)
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