本文 2 (釈明と決意表明、文字数とプロット)

   ………


 やあ、この文章を読んでいるという事は前回の本分が公開されているという事であり、同時に、この文章自体も公開されているという事だ。現時点ではこの文章はいつ公開されるのかは全く未定であるため、これが書かれた時点から読者の皆との時間的な隔たりはどれだけあるのかというのは全然わからないが、少なくとも作品外世界の私は先程の本文の公開から、たっぷり2時間ほど飯を食ったり皿を洗ったりトイレに行ったりラジパンダリした。クソ古い諧謔表現を差し挟んだところで【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ】について、今回こそこの本文で語ろうか。

 流石に、第二話まで持ち込んだのだ、【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ】について語らねばなるまい。


   ―――


 実を言うと、元々この【バッファロー。その思念。】というタイトルの作品はある程度、物語の概算を付けて作り始めていた。つまり、こんな冗長な語り口がベラベラと読者に語りかけ、更には近況報告や製作時間の経過にまで口を出すような馬鹿な作品になる予定はなく、純然たるSFとして始めようと思い、序文を書いたわけだ。

 序文の後の文章も当初は違った。臆病虚弱たる私がKACの説明と共に、【サプライズバッファローアタック現象】という作品を書き上げ、公開したところから物語が始まる予定だったのだ。だが、私は、こう言ってはあれだが、人一倍のメタフィクション好き、というよりも生粋のツツイストであり『残像に口紅を』のような作者を想定したメタフィクション構造というものに一家言ある人間なのだ。

 おかげでどうしてもこのメタフィクション構造についてあれこれと言いたくなってしまった。おかげで今、このありさまである。


 読者の皆においても困惑と好奇がないまぜの読みをされているのではないだろうか。もしかしたら【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れについて】私が語るよりもどんな横道にそれるのか期待しているものもいるのではないか。その手に乗る気はさらさらないと言えばうそになる。


 まずはその嘘になるということについて詳らかにしよう。さっき言ったように私は【バッファロー。その思念。】という作品の筋書きプロットはしっかりと持っていた。にもかかわらず横道に逸れ、さっきの本文を無為に使ってしまった。それにはメタフィクションに対するこだわり以外の理由がもう一つあるのだ。理由と言うのは【そのプロットの拡張性が失われてしまったこと】である。プロットを書き出したはいいものの先々の展開が書いていくうちに陳腐で凡庸に感じられ、実際書いてみてもつまらなかった。これではいけない。私はそう思ってそのプロットを放棄し、書き直した。筆の乗った文章と言うのはまず気持ちが乗っていかなくてはならない。まあ、それよりも先にプロットをしっかり明文化しろと言うのはあるが……とにかく私は焦っていた。とにかく、面白いものを書かねば、短編なのだ、しかもこういったお題なのだ、そこまで本気になって書く気にならない。そんな邪な思いを以て、だらだらとさっきの駄文を連ねてしまった。そして今も、だらだらと言い訳じみた釈明をここに載せているわけだ。この文章はさっきの文章同様、元となるプロットをきちんと再編し、まずはアイディアを固め直してから文章にするという丁寧な工程を面倒がり、惰性で書くことができる饒舌体の文章を長々と書き連ねていこうではないかという堕落した小狡い思想の現れなのだ。だからこそ私はさっき【その手に乗る気はさらさらないと言えばうそになる】と言った。ほかならぬ私自身が【横道に逸れ続ける】という【手】を使っているのである。


 そうしたくだらなく持って回った言い方で自身の落伍した文筆家精神をいけしゃあしゃあと語っていたらもう【約1,500文字】あ、いや今【約1,600文字】になった。編集画面の左下の文字数カウントがそう切り替わっている。制限時間ではないが、文字数の制限が、私の中であるために、あと約千文字程度の活字で、【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れについて】語らねばならないのだ。


 いや、だが、本来、カクヨムの作品として一話に表示される文字数はもっと多い、私が3000文字以下にこの話を納めたがっているのは、ただの高慢とより多いPV数を稼ごうという、これまた狡い考えによるものではないか。


 おい、そんなことを行ってしまえば作品を書くこと自体が作者のエゴだ。だからそう言った制約はこの私が勝手に定めるのだ。


 いやいや、しかしだね、君、読者に対してそれはあんまりにも不誠実なのではないだろうか、少なくとも前回私は【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れについて】の詳細は次の回に回すと、そう言う趣旨の約束をしたわけで、それが達成されるまで、この話の尺を伸ばしていくというのが筋というものなのではないかい。


 だが、それは本当に読者に寄り添っているというのだろうか。ただでさえギチギチと詰まったこの文章をある程度読み易いように間隔を開けたりなんだりしているのに、それに前回も長々とした文章を一話につめすぎるのは読者に良くないと言ったばかりなのに2話目では方針転換というのは、それは結局身勝手というものではないか、この馬鹿。


 馬鹿とは何だこの野郎。クソッ。自分で言って自分でムカつく。クソッ。既に【約2,200文字】と表示されているではないか。もう使えるのも最大約800文字ではないか。いや、と言うより【最大約800文字】ってなんだよ。最大なのに約? ……日本語的にはあっているのだろうか? なるべく明らかな誤用は避けたい。だが、言語というのは運用されるものであり運用こそが言語の本質。誤用と言うのも使われ続ければいつしか常用となってしまう。辞書だってその時点あるいは過去においての運用を集積し示しただけであり辞書が真実を作ることはないわけだ。そもそも言語における正解はないのだから。ああもう、これ以上言語について語ると共通性の認識だのなんだのになるやめろ止めろ。ここでそんなことを考えるな。おれがここで言いたいのはそんなことではないんだ。


   ―――


 ああ、ああもう【約2,500文字】だ。ええい、こんな文字数のことなど文章中で気にするな。読者は今何文字だなんて気にしてはいない! それよりも内容だ。このままでは殆ど愚痴やらどうでもよいことで空費された訳の分からない文章を皆に見せる事になってしまう。そんな醜態は御免だ。


 ああ、改行してしまった。醜態は御免だの続きを書かねばならないのに。いや、もう文字数がない! ダメだ。今回も【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ】について書くことができない。いや、書くことをしなかったのだ。私は、おれは、狡い思考をしている。このままずっとこの文章を続けてやろうと。

 そして新作の欄を埋め尽くし、より多くのPVを稼ぎ、人気になってやろうという下衆な考えをしている。


 ああ厭だ。俗物だそれは。だが、何にもないおれには、模試を書き連ねる以外にとりえのないおれには……そんなことしかできないのだ。


 ならばやってやろう。このまま出してやる。そしてたくさん出してやる。


 一日、一週間、一か月、できるとこまで出してやる。落ちるとこまで落ちてやるのだ!


 さあ【約3,000文字】もう、これ以上長々とはやらん。次回も書いてやる、どんどん書いてやる。読まれなくったって書いてやる。いつの日か【全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れについて】について書ける日まで。


 (続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る