第68話 俺と観雫は決めたい

「────とにかく!私がお姉ちゃんか一入がお兄ちゃんになるのかは、今後の私たちの関係性を考えてもとっても重要になってくるってこと!わかった?」

「わかったわかった」


 観雫と軽く言い合った後、観雫はそう結論付けると、一度溜息をついて冷静さを取り戻した様子だった。

 しかし……俺と観雫、どっちが兄でどっちが姉になるのか、か。


「……観雫は、俺の姉になるのか妹になるのか、どっちが良いんだ?」

「悩ましいけど、やっぱりお姉ちゃんかな、私が一入のお姉ちゃんのところは想像できるけど、一入が私のお兄ちゃんなのはなんか違わない?」

「どういう意味だ」

「だって、一入ってちょっと抜けてるところあるし」

「そうか?」

「うん、あるよ?」

「確かにお兄ちゃんはそういうところあるよね!」


 今は俺と観雫の話ということで会話に参加していなかった結深が、ここで俺たちの会話に参加してきた……そんなところで共感しないで欲しいところだ。


「一入は?私のお兄ちゃんになるのと弟になるの、どっちが良いの?」


 ……どちらでも良いと言えばどちらでも良いのかもしれないが、それでもどちらかを選ぶのであれば────


「兄が良いな」


その理由は単純で、観雫の弟ということになってしまうと、観雫は事あるごとに俺のことを弟扱いしてきそうだからだ。


「そっか、でも私がお姉ちゃんなのと一入がお兄ちゃんなのは共存できないから、どっちがお姉ちゃんでどっちがお兄ちゃんなのか決めないとね」

「あぁ」


 ということで、俺は早速観雫にあることを聞いてみることにした。


「……観雫の誕生日はどのぐらいだ?」


 もし観雫の誕生日が俺よりも遅ければ誕生日で決めよう、と思ったが……


「私?六月だよ」

「……」


 俺よりも早かったため、その考えは無しにしよう。

 と言っても、俺の誕生日は一月だから、ほとんど俺の方が早い見込みは無かったが。

 そう思っていると、まるで俺の心を読んでいるかのように観雫が口角を上げて言った。


「一入がそうしたいって言うんだったら、誕生日の早さで決めてもいいよ?その場合、一入は一月生まれだから六月生まれの私の方がお姉ちゃんになるけどね」


 観雫の言うとおり、俺は一月生まれで、六月生まれの観雫よりも約半年も誕生日が遅い。

 観雫の言葉に対して改めてそう考えていた俺だったが────そんな俺の中に、ある一つの疑問が生まれたため、俺は咄嗟に出てきたその疑問をその咄嗟に出てきた勢いのまま口にした。


「ど、どうして俺の誕生日を知ってるんだ!?」


 過去に観雫に誕生日を教えた覚えはない……もしかしたら俺が忘れているだけで、どこかのタイミングで俺は観雫に自分の誕生日を教えていたのかもしれない────と思ったが、観雫は優しい声音で言った。


「好きな男の子の誕生日ぐらい、知ってるよ」

「観雫……」


 俺と観雫が少しの間静かに見つめ合っていると────結深が大きな声で言った。


「はいはい、ストップ!私は二人のどっちがお兄ちゃん、もしくはお姉ちゃんになるかの話し合いを見届けるために静かにしてるだけで、二人のことをそういう雰囲気にするために静かにしてるんじゃないからね!」


 結深にそう言われると、俺と観雫は一度互いに視線を外した。

 そして、観雫が結深に言う。


「そうだね、ごめんね結深ちゃん」


 そう言うと、観雫は続けて俺の方を向いて言った。


「一入はどうやって決めたい?」

「……」


 俺は、少し沈黙して考えてみる。

 俺と観雫、どちらが兄でどちらが姉か……それを決める方法。

 ……少し沈黙して考えてみた結果、俺はある一つの答えに辿り着いたので、そのことをハッキリとした声で二人に伝えた。


「俺は────俺と観雫で決めるんじゃなくて、結深に決めてもらうのが良いと思う」

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