第67話 観雫の新しい一面

「お兄ちゃん!今の本当……!?二人のことを愛したいって、私のこと……愛してくれたいって思ってくれてるの!?」

「あぁ、本当だ……今までずっと答えを出せずに悪かった」

「お兄ちゃん……!」


 結深は、嬉しそうな表情でさっきよりも多くの涙を流し始めた。

 ……本当に、もっと早くこの言葉を結深に伝えられたらよかったのにな。

 そう思いながらも、俺は嬉しそうに涙を流している結深のことを見て、改めて結深のことを愛おしく感じた。

 そして、続けて涙を流している観雫が涙声になりながら言う。


「一入……私のことを、愛してくれるの?私たちは、これから三人で楽しく過ごしていけるの?」

「あぁ、俺は観雫のことを愛する……そして、俺たち三人で過ごしていく」

「一入……!」


 観雫は、嬉しそうな表情でさらに多くの涙を流し始めた。

 観雫にも、告白をしてもらってからこの言葉を伝えるまでにとても長い時間がかかってしまった。

 普段は落ち着いているように見える観雫だが、こうして俺や結深のことで嬉しくなったり、涙を流してくれたり……俺は本当に、観雫のことも好きだ。

 俺は二人への想いを抑えることができずに、二人のことを一緒に抱きしめた。

 俺が結深と観雫を、そして結深と観雫が俺のことを抱きしめて、しばらくの間お互いに抱きしめ合うと、俺たちは一度互いの体を離した。

 ────すると、次に結深と観雫が互いのことを抱きしめ合った。


「観雫さん……!これからは私たち、仲良くしようね……!」

「うん、結深ちゃん……!これからはお姉ちゃんとして、ずっと結深ちゃんと一緒だからね!」


 俺はそんな二人のことを見て微笑ましく思いながら、二人が抱きしめ合っているのを見届けた。

 そして、二人は涙ながらにしばらくの間抱きしめ合うと、互いに体を離した。

 その後、一度落ち着いて話すことが決まり、俺たちはリビングの椅子に座り、その頃には二人の涙も収まっていた。


「ねぇ、二人とも……私たちが義兄弟になったことで、まず一番最初に決めておかないといけない重要なことがあるんだけど、そのことについて話しても良いかな?」


 俺たちが義兄弟になったことで、一番最初に決めておかないといけない重要なこと……?

 ……俺には心当たりが無かったため、頷いて言う。


「あぁ、なんだ?」

「私も気になる!」


 俺に続けて結深もそう言うと、観雫が真剣な顔つきで言った。


「私と一入にとって結深ちゃんは年下だから、結深ちゃんが妹なのは異論無いと思うけど……問題は、私と一入、どっちがお兄ちゃん、もしくはお姉ちゃんなのかってことだよ」


 俺はそれを聞いて、少し沈黙してから思わず笑ってしまいながら言った。


「それ、そんなに重要なことか?」


 俺がそう聞くと、観雫が大きな声で言った。


「重要でしょ!だって、それで私が一入に香織お姉ちゃんって呼ばれるか、妹として扱われるかが決まってるんだよ?」


 観雫がそう言うと、結深は納得したように頷いて言った。


「確かに、それは重要かも!」

「そ、そんなに重要か?」


 俺がそう聞くと、観雫は言った。


「重要!一入から香織お姉ちゃんって呼ばれるのは、一入から名前を呼ばれるたびに弟としての可愛さと同時に異性としての魅力も感じられて、逆に一入から妹として扱われるのもそれはそれで新しい一入のことを見られるかもしれないし、兄としてのかっこいい一入のことを見られるかもしれないんだから!!」


 そう言われると重要かもしれないな……だが。


「俺は早速新しい観雫の一面を見れた気がする」


 俺がそう言うと、観雫は頬を赤く染めて言った。


「な、何その感じ……!なんか恥ずかしいんだけど!」

「恥ずかしがることじゃ無いだろ?」

「うるさいから!」


 その後、俺と観雫は軽く言い合いをした────俺は、やはり観雫の新しい一面を見れた気がして、軽い言い合いをしている時間すらもとても楽しく感じられた。

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