第61話 義妹と観雫は姉妹みたい

「はぁ〜!お兄ちゃんに背中流してもらえるの幸せだった〜!なんていうか、お兄ちゃんが優しく背中流してくれてて、暖かいのを感じたよ!」

「私も……一入がすごく丁寧に流してくれてて、大事に思ってくれてるのが伝わってきた」


 二人の背中を流し終えると、二人はそんな感想を口にした。

 そして、結深が観雫のことを見ながら当てつけのように言う。


「まぁ〜?観雫さんが居なかったら、私は両手でお兄ちゃんに背中を流してもらえてたわけだから、そこだけは気になるけど〜」


 そんな結深の言葉に対して、観雫は落ち着いて言う。


「それなら、また今度それぞれ背中を流して貰えば良いだけだと思うよ?」

「は、はぁ!?お兄ちゃんと観雫さんがこうして一緒にお風呂場に入るのは今日が最後!また今度なんて無いから!!」


 結深自身の言っていた言葉だが、結深としては今日だけ特別に観雫も一緒にお風呂に入ることを許可しただけで、次はそれを許可するつもりなど無いという。

 結深の気持ちを考えてみれば、それも当然の発言だろう……だが、観雫は小さく微笑んで言った。


「そうかな?私はあると思うけど」

「っ……!」


 その観雫の言葉を聞いた結深は、俺に向けて大きな声で言った。


「お兄ちゃん!今から私と一緒にお風呂に浸かって、観雫さんに私たちのイチャイチャを見せつけちゃおうよ!」

「何言ってるの結深ちゃん、前と一緒で今日も三人でお風呂に入るんだよ?」

「嫌!私はお兄ちゃんと二人で入るの!」

「はいはい、一入、先お風呂浸かってて、すぐに結深ちゃんのこと説得するから」


 観雫は、もはや手慣れたようにそう言った。


「わかった」


 俺がそう返事をすると、観雫は早速結深の説得を始めた。

 俺はそれを横目にお風呂に浸かって、そんな二人のことを見ながら思う────こうして見ていると、二人は姉妹みたいだ。

 言い合ったり喧嘩をしたりするけど、息の合うところはしっかりと合っていて、最終的には意見を合わせている……いつまでも、こんな二人を見ていたいな。

 俺がそんなことを思っていると、どこか拗ねたような表情をした結深と微笑んでいる観雫がお風呂に浸かっている俺の前にやって来た。


「それで、どうなったんだ?」


 俺がそう聞くと、観雫が言った。


「うん、三人で浸かることになったよ……ね、結深ちゃん?」

「別に、私は納得したわけじゃ無いから!仕方無くだから!」

「はいはい」


 観雫が相変わらず慣れたようにそう言うと、結深が俺の右隣、観雫が俺の左隣に入って来て、お湯に浸かった。


「やっぱり、三人でお風呂に浸かるのもそれはそれで良い気持ちになるね」

「私はお兄ちゃんと二人の方が断然良いんだけど!」


 俺がこんなことを思うのも良く無いのかもしれないが、俺には観雫の言っていることも少しわかった……落ち着くというのとはまた違う、本当に観雫が言ったそのままの意味で、良い気持ちになる……そして、そんな二人のやり取りの後、少し間を空けてから観雫が言った。


「……ねぇ結深ちゃん、今考えてること一緒だと思うんだけど、どうかな?」


 ……考えていること?

 俺はその観雫の言葉の意味がわからなかったが、結深には心当たりがあるらしく小さく頷いて言った。


「……癪だけど、一緒だと思う」

「え……?」


 俺は、その結深の言葉に驚く。

 本当に、どうして全く何も言葉を交わしていないのにそこまで互いの思考がわかっているんだ……?

 俺がそのことに疑問を抱いていると、観雫が言った。


「じゃあ……しよっか」


 ……しよっか?

 今から、ここで何かをするのか?

 さらにそう疑問を抱いた俺は、咄嗟にその疑問を口にしようとした……その時。


「何をするつもり────」


 二人は、体に巻いていたタオルを脱ぎ去ると、右隣に居る結深は俺の右腕を抱きしめ、左隣に居る観雫は俺の左腕を抱きしめてきた。

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