第60話 義妹と観雫は流して欲しい
二人同時に、俺に背中を流して欲しいと言った二人だったが────その直後に、二人は口を開いて言う。
「観雫さん、私の真似しないでよ!」
「結深ちゃん、私の真似しないでくれる?」
これまた、見事に二人は同じことを言った。
ここまで同じことばかり言うなら喧嘩だって起きない……のが普通だが、この二人にそんな普通というものは通用しない。
案の定、二人は今日何度目かわからない言い合いを始めた。
「私は真似なんてしてないんだけど、私の真似してるのは観雫さんの方でしょ?」
「私だって真似なんてしてないよ、こうなったら一入に背中を流してもらう方を決めるしかないね」
「じゃあ、お兄ちゃんにより背中を流して欲しいと思ってる方がお兄ちゃんに背中を流してもらうってことでも良いよね?」
「うん、それでいいよ」
まずい、また妙なことが始まろうとしている。
もしこの話し合いが始まってしまったら、止めることができずに話し始めることを俺は知っているため、その話し合いが始まる前にそれを止めることにした。
「二人とも、一度落ち着いて────」
「じゃあ言わせてもらうけど、毎日お兄ちゃんと身近に生活しててお兄ちゃんのことを常に考えてる私の方がお兄ちゃんに背中を流して欲しいと思ってるに決まってるじゃん!」
「どうかな?毎日身近に会える結深ちゃんよりも、学校でしか会えない私の方がより強く一入のこと考えてるから、私の方が一入に背中を流して欲しいって思ってるからね」
「身近な方がよりたくさんその相手のことを考えてるに決まってるから!」
「身近に居たいのに居られないからこそ、ずっと頭の中で考えちゃうんだよ」
「身近に居る私は目でもお兄ちゃんのことを捉えながら頭の中でもお兄ちゃんのこと考えてるんだから私の方が考えてるの!」
「姿も頭の中で想像してる私の方が、絶対に一入のこと考えてるよ」
「でも────」
もはや、二人のことを止めることができないと確信した俺は、しばらく続いた二人の話し合いを静かに聞き続けた。
そして、その話し合いは────
「じゃあ!お兄ちゃんに両手で私たちそれぞれの背中を同時に流してもらおうよ!」
「うん、それでいいよ」
というところに行き着いたらしい。
そして、二人は俺に向けて言う。
「そういうことだからお兄ちゃん、私たちの背中流してくれる?」
「両手を使ってそれぞれの手で私たちの背中を流してくれたら良いから」
……そもそも俺は二人の背中を流すなんて一言も言っていないが、二人が話し合いをしている間に何故か俺が二人の背中を流すということは確立されてしまっていた。
断ってもいいが、断った反動でさらに何か予測できない事態が引き起こされるのは避けたい。
「……わかった」
そう言うと、俺は立ち上がって二人の後ろへ回る。
そして、俺はボディソープを手に取ると言った。
「背中だけタオルを外してくれ」
俺がそう伝えると、二人はタオルを外し、自分の両手で自分のタオルを押さえると、背中を俺に向けて露わにした。
そして、結深が頬を赤く染めながら俺に言う。
「お兄ちゃん、タオルで体の前を隠しながら背中だけ見せるってえっちな感じしない?」
「変なことを言うな!」
そして、次に観雫が頬を赤く染めながら俺に言った。
「背中なんて見られてもなんとも思わないって思ってたけど、実際に見られると……なんだか、ドキドキするね」
「観雫まで……!と、とにかく!もう背中を流し始めるからな!」
そう言うと、俺は宣言通り両手を使って二人の背中を流し始めた。
「はぁ、お兄ちゃんに背中流してもらえるなんて幸せ〜」
「そうだね……」
普段よりもどこか甘い声音でそう言った二人の背中は、色白で滑らかな肌をしていて、綺麗にくびれができていた。
顔は整っていてスタイルも良く、間違いなくとても魅力的な二人だ……そして、魅力的なのは容姿だけじゃない。
今日は色々と二人に振り回されているが、二人は間違いなく性格だって魅力的だ。
そんな二人が、俺のことを……
「……」
その後、俺は二人の背中を大事に、丁寧に、優しく流した。
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