第55話 義妹は思い出が欲しい

 異性として求めて欲しい……

 結深にそう言われた俺だったが────俺は今日、今までに無いほどに結深のことを異性として意識している。

 そのため、そんなことは言われるまでもなかった。

 ……そのことを結深に伝えようかどうか迷ったが、結深のためにも今はそれを言葉として伝える時だと判断した俺は、そのことを口にする。


「結深……俺は、そんなことを言われるまでもなく、今日一日を通して結深のことを異性として強く意識している」


 俺がそう伝えると、結深は頷いて嬉しそうに口角を上げながら言った。


「それはわかってるよ……でも、意識してくれるだけじゃなくて、私はお兄ちゃんに異性として求められたいって思ってるの」

「い、異性として求めるって……」


 それはつまり……そういうことなんだろうか。

 俺がその言葉の意味を考えていると、結深が小さく笑って言った。


「お兄ちゃんの考えてることで正解だよ……私、お兄ちゃんにえっちな意味で、異性として求められたいの」

「ゆ、結深……それは────」

「私も、今までのことからいきなり本番のことをするのは良くないって気付いてるから、今すぐ本番をしたいって言ってるわけじゃないの……でも、この旅行でせっかくお兄ちゃんと、異性としても今まででは考えられないぐらいに親密になれたのに、何もしないで終わるのは寂しいなって思って」

「寂しい……か」

「うん……だから、寂しくないように、ちょっとだけ思い出をちょうだい?」


 そう言うと、結深は頬を赤く染めながら、俺の左手に重ねていた自分の右手で俺の左手首を軽く掴むと、それを自分の身に寄せた。

 そして、その手を自分の胸元の前に持ってくると、結深は俺の左手首から手を離して言葉通り愛する人を求める目で言った。


「お兄ちゃん……触って、くれる?」

「……」


 異性として求められたい、というだけだったら、俺はもしかしたら何もしなかったかもしれない。

 だが……何もしないで終わるのは寂しいと言われ、その寂しさを無くすために思い出が欲しいと結深に言われたら────それに応えたいと思ってしまう。

 俺は、心臓の鼓動を早めながら、ゆっくりと結深の胸元に手を近づけた。

 俺の手が結深の胸元に到達するまで、ほとんど時間はかかならいはずだが、俺にはそれまでの時間がとても長く感じられた。

 ────そして、俺の手は、浴衣越しに結深の胸に触れた。


「お、お兄ちゃん……!」


 結深は嬉しそうにそう言った……ずっとわかっていたことだが、結深の胸はやはりとても大きい。

 浴衣越しに触れただけでも、その大きさや柔らかさが伝わってくる────そして、それが伝わってきた途端、俺の心臓の鼓動は急激に速まった。


「……」


 結深の表情を見てみると、結深はとても嬉しそうに頬を赤く染めていて、愛情の込められた目で俺のことを見ていた。

 ……そうだ。

 こんなことも、出会った時からわかっていたはずだが────結深は、女の子なんだ。

 ……そして、今の結深からは、とても色気なようなものを感じる。

 俺がそんなことを思っていると、結深が今までに無いほどの甘い声で言った。


「お兄ちゃん……触れただけじゃなくて、もっと触っていいんだよ?」

「……あぁ」


 俺は、結深に言われた通りに、今度は触れただけではなくしっかりと触ってみる。

 ……しっかりと触ってみると、弾力なようなものも感じ────


「っ……!」

「ゆ、結深!?」


 結深が艶のある声を上げたので、俺は一度結深の胸から手を離す。

 すると、結深は頬を赤く染めながら言った。


「だ、大丈夫、変な声上げちゃってごめんね……お兄ちゃんに、異性として私の体を触ってもらえるのが嬉しくて……お兄ちゃん、私今日はこの幸せな気持ちのまま、お兄ちゃんと一緒に寝たい……とっても幸せな思い出も、もらえたから……」


 そう言った後、結深は自分の胸元に手を当てて嬉しそうに口を結んだ。


「……そうだな、そうしよう」


 その後、結深と一緒にベッドで横になった俺は、結深に抱きしめられる。

 そして、眠りへ落ちる前に俺は思う────今日、結深とこの旅行に来られてよかったな。

 そんなことを思っていると、俺は結深に抱きしめられたまま眠りへと落ちていた。

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