第53話 義妹にドキドキする
「お兄ちゃん見て!美味しそうなお団子売ってるよ!」
宿泊先の旅館近くにあった和風な雰囲気の街にやって来ると、結深は目の前にある団子の売ってある店を見ながらそう言った……確かにとても美味しそうだ。
「食べてみるか?」
「うん!」
俺と結深は、俺がみたらし団子、結深が三色団子を購入すると、団子屋さんの前にある赤色の長椅子に座って購入した団子を食べることにした。
そして、結深は三つある団子の一つ目を食べると、大きな声で言った。
「美味しい〜!やっぱり団子はこの食感と甘さだよね〜!」
美味しそうに団子を食べている結深のことを見て、俺も早く団子を食べたくなり一つ目の団子を口に入れた。
「……美味しい」
団子が柔らかいのは当然のこと、タレがとても美味しい。
こうして美味しいものを食べているだけで、この旅行に来て良かったと思える。
俺が団子を食べながらいかにも和風な街並みを見ながらそんなことを思っていると、隣の結深がそんな俺の視界の中央に顔を覗かせて来て言った。
「お兄ちゃん!私の三色団子一つ食べる?」
「良いのか?」
「うん!その代わり、お兄ちゃんのみたらし一つちょうだい!」
「わかった、そうしよう」
そして、俺は早速その結深の持っている三色団子を食べようと結深の持っている串を手に取ろうとした────が、結深はその串を俺から遠ざけて眉を顰めて言った。
「私がお兄ちゃんに食べさせてあげるから、お兄ちゃんは口だけ開いてて!」
「誰が見てるかわからない外で、そんなことできるわけ────」
俺がその結深の提案に反対しようとすると、結深はそんな俺に顔を近づけてきて言った。
「本当は、私にご飯食べさせてもらうのが恥ずかしいだけなんじゃないの?」
「ち、違う!そういうわけじゃ────」
「だったらはい、あ〜ん」
あ〜ん、という食べさせられた方は少し気に掛かったが、これ以上何かを言ったらまたからかわれそうだったため、俺は特に何も言わずにそのまま団子を一つ食べた。
そして、結深は頬を赤く染めて聞いてくる。
「ど……どう?」
……半分ムキになった形で団子を食べさせられたわけだが────異性から食べ物を食べさせられるのは初めてで、しかも結深がこんな表情をしていたら、俺も少しだけ……変に意識してしまいそうになるな。
「……あぁ、美味しい」
俺がそう言うと、結深は一度嬉しそうに口元を結んでから言った。
「……じゃあ次は、私にも食べさせて?」
普段なら何か反対意見を言っていると思うが……今はとてもじゃないが、そんなことを言える雰囲気ではないし、不思議とそんなことを言う気にもならない。
そのため────
「わかった」
と返事をし、結深の口元にみたらし団子を運ぶと、結深はその一つを食べてから頬を赤く染めて言った。
「……甘いね」
「……そうだな」
それから、俺たちは腕を絡めて街を楽しむことにした。
……どうしてだろうか────今日は、今までの中で一番、結深のことを異性として意識している────違う、もっと具体的に言えば……俺は今、結深にドキドキしている。
「……」
その後、街を楽しんでいると暗くなってきたので旅館へ帰り、結深と一緒に旅館で夜ご飯を食べた。
「夜ご飯も美味しかったね〜!」
「あぁ、美味しかったな」
俺が頷いて言うと、結深は少し間を空けてからどこか照れたような様子で言った。
「……お兄ちゃん、知ってる?この旅館って、大浴場の別にそれぞれの部屋に露天風呂が付いてるんだよ?」
「そうだったのか」
「うん」
そういえば開いていない引き戸があるが、あれは露天風呂へ続く引き戸だったのか。
俺がそんなことを思っていると、結深は頬を赤く染めながら言う。
「……私と一緒に露天風呂、入ってくれるよね?」
どことなく今日は結深のことを今まで以上に異性として意識している俺にその結深からの提案を断ることができるはずもなく、俺は結深と一緒に露天風呂に入ることとなった。
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