第46話 観雫はお風呂に誘う
翌日の朝、朝食を食べるためにリビングにやって来ると、結深が明るく挨拶してきた。
「おはよう!お兄ちゃん!もうご飯できてるよ!」
「おはよう……ご飯、ありがとう」
明らかに昨日までと結深への対応が違う俺のことを見て、結深は嬉しそうにしていた。
一度眠ったら結深のことを異性として意識したことが無くなる可能性も考えていたが、どうやらそうはならなかったらしい。
その後、結深と一緒に朝食を食べて一緒に登校するために玄関へ向かう。
そして、二人で靴を履いた後で、結深が俺に顔を近づけてきて言った。
「お兄ちゃん、昨日お風呂場ではできなかったキスの続き、行ってらっしゃいのキスってことでする?」
「朝から何言ってるんだ、するわけないだろ?」
「は〜い!じゃあ、夜だったら良いってことだよね」
「そういう意味じゃない!」
確実に俺の反応の違いを楽しんでいる結深と一緒に学校に登校すると、教室は別々なため途中で別れて俺は一人で自分の教室へと入った。
ようやくこれで少しは落ち着けそうだ。
そんなことを思いながら自分の席に座ると、俺の前の席に座っている観雫が挨拶をしてきた。
「おはよう、一入」
「おはよう、観雫」
いつも通り朝の挨拶を交わした俺と観雫だったが、観雫が早速質問をしてきた。
「それで?昨日は何があったの?」
「何がって……なんの話だ?」
観雫の突然の質問に、俺がその質問の意図を読み取れないでいると、観雫は少しだけ俺に顔を近づけてきて言った。
「だから、昨日は結深ちゃんと何があったの?」
「……え?結深とって……どうして俺はまだ何も言ってないのにそんなことを聞いて来るんだ?」
俺がそう聞くと、観雫は呆れた様子で言った。
「家に帰ったら一入が結深ちゃんに何かされるのなんて、今に始まったことじゃないじゃん……だから、どうせ昨日も何かあったのかなって思っただけだよ」
「そ、そういうことか」
「それで?どうなの?」
……昨日あったことや俺の心情の変化を伝えたら、観雫はどんな気持ちになるんだろうか。
俺のことを好きだと言ってくれている観雫に、昨日は結深と二人でお風呂に入ったことを伝えて、さらには俺が結深のことを異性として意識してしまったことを伝える……そんな酷なこと、もしかしたら伝えない方がいいんじゃ────
「言っておくけど、私に変な気とか遣わなくていいから」
俺の考えが透けて見えていたのか、観雫がそう言ってきた。
……そこまで言われたら、本当のことを伝えないわけにはいかない。
俺は、昨日結深と一緒にお風呂に入って、いよいよ本当の意味で結深のことを異性として意識してしまったことを観雫に伝えた。
「……そっか」
そう呟くと、観雫は席を立って言った。
「一入、今日の放課後時間くれる?」
「……あぁ、どこに行くんだ?」
「私の家」
「み、観雫の家……?観雫の家で何を────」
「放課後、空けといてね」
観雫はそれだけ言い残すと、自分の席の方へと歩いて行った。
このタイミングで観雫の家に誘われるなんて……観雫のことだから、結深のように強行手段を取るようなことはしないと思うが、家に誘われたということはそれ相応の理由があるんだろう……それが何かは、放課後がやって来るまではわからない。
────そして、その放課後がやって来ると、俺は観雫と一緒に二度目の観雫の家へと向かい、その家の中へ入った。
「……」
相変わらずとても甘い香りを感じながら靴を脱ぐと、俺は観雫に改めて聞く。
「それで、この観雫の家で一体何をするんだ?」
「うん、今から私と二人でお風呂入ってくれない?」
「……え?」
……観雫と二人で、お風呂!?
俺は、観雫の口から出た突然の言葉に驚いて、少しの間固まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます