第44話 義妹とお風呂
────家に帰って早々、結深から一緒にお風呂に入ろうという提案を受けた俺は、とりあえず結深と一緒に夕食を食べることにした。
そして、雑談を交えながら夕食を食べ終えると、結深が元気に言った。
「じゃあ、ご飯も食べ終わったことだし一緒にお風呂入ろっか!」
一緒にご飯を食べたらその意味のわからない提案をしていたことも忘れるかと思ったが、どうやらそういうわけにはいかないらしい。
ひとまず、結深に詳しく話を聞いてみることとしよう。
「どうして突然そんな話になるんだ?」
「突然って、私前からお兄ちゃんと二人でお風呂入りたいって言ってたよね?」
「それはそうだが、今日は帰ってきた時だけじゃなくてご飯を食べ終えた後まで言ってきてるだろ?どうして今日に限ってそこまで俺と一緒にお風呂に入りたがるのか、その理由を聞きたいんだ」
「……それは────」
結深は、俺に近づいてくると俺の目を覗き込むようにしながら言った。
「お兄ちゃんが私のことを、異性として意識してないからだよ」
「っ……!」
今日、ちょうど観雫と話した時に俺が考えていたことを指摘され、俺は思わず一歩足を下げたが、結深はさらに距離を縮めて暗い声音で言ってくる。
「昨日私がお兄ちゃんのこと抱きしめた時、お兄ちゃんは意識的には私が妹だからって異性として見ないのをやめてくれようとしてるのはわかったけど、やっぱり根付いた思考はそう簡単には変わらないんだよね……あと数ヶ月待ったらそれも変わってくれるのかもしれないけど、私そんなに待てないよ」
結深は俺にそう伝え終えると、俺と距離を縮めるのをやめて言う。
「だから、お兄ちゃんには私と二人で一緒にお風呂に入って欲しいの……そうすれば、すぐに変えられないまでもちょっとは私のこと異性として見れると思うから」
……結深のことを妹だからという理由で異性として見ないのをやめると言ったのに、俺は結局まだ結深のことを本当の意味では異性として見れていない。
だからこそ、結深は俺と一緒にお風呂に入ることで俺に異性として意識させようとしている……今までのようにこの誘いを断ることはできるが、この誘いを断ったら結局俺は結深のことを妹だと思うことが正しいと信じていた時の俺と何も変わっていないことになる────そうなれば、結深に、そして俺自身にも嘘をつくことになってしまう。
それだけは絶対に────
「……わかった、二人でお風呂に入ろう」
「本当……!?やった〜!」
俺がそう返事をすると、結深はとても嬉しそうにしながら飛び跳ねてそう言った。
その後、二人で着替えを持ってお風呂場の前に行くと────結深が制服を脱ぎ始めた。
「ま、待て結深!どうして目の前で脱ごうとしてるんだ!」
「どうしてって、どうせ一緒にお風呂に入るんだから目の前で服脱いでも一緒じゃないの?」
「違う!お風呂に入るときは、ちゃんと体にタオルを巻いてもらう」
「え〜!タオルなんて要らないよ!」
色々と言う結深だったが、俺とお風呂に入ることが最優先だったため、どうにか体にタオルを巻いてお風呂に入ってくれることとなった。
そして、俺たちは別々に服を脱いでタオルを体に巻くと、一緒にお風呂場に入った。
「お兄ちゃんと二人で、お風呂……」
結深は頬を赤く染めながらそう呟いた。
……改めて言われると少し緊張してきたが、俺はできるだけ結深の体を見ないようにして、その緊張を紛らわせるように口を開いて言う。
「じゃあ結深、先に体を洗っててくれ、俺は後でいい」
「……ううん、お兄ちゃんが先でいいよ!」
「そうか?」
「うん!」
笑顔でそう言う結深の言葉に甘えて、俺は先に体を洗うことにした。
早速お風呂用の椅子に腰掛けて、体を洗い始め────ようとしたとき、結深が後ろから俺のことを抱きしめてきた。
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