第43話 観雫は本気で好き

 俺が、結深のことをどう思っているのか。

 当然、ここで聞かれていることは妹として可愛いと思うとか、いつも料理を作ってくれてありがたいとかっていう話ではなく、恋愛的な話だろう。

 恋愛として結深のことを見た場合、俺が結深のことをどう思っているのか……


「……結深のことを妹だからって異性として見ないのをやめたとは言ったものの、だからと言っていきなり結深のことを恋愛対象にまで入れられるのかって言われたらまだ難しい」

「見た目とか性格とかはタイプなんだよね?それなのに恋愛対象に入らないの?」

「言葉にされると矛盾してるように聞こえるかもしれないが、そうだ」


 ……この話はとても重要な話だが、俺はさっきから気になっていることがあったためそのことを口にすることにした。


「それより観雫、どうしてずっと俺のことを抱きしめてるんだ?普通、こういうのは話題が切り替わる時に抱きしめるのをやめるんじゃないのか?」

「休み時間中ずっと抱きしめるって言ったじゃん、だから話題が変わるとか関係ないよ」

「結深に抱きしめられてた時は、結深の性格的にもまだ妹に抱きしめられてるって感じでどうしても異性として受け取ることは難しかったが、観雫に抱きしめられるのはやっぱり結深に抱きしめられるのとはどこか違うな」

「……どう違うの?」


 どう違うのかと聞かれたら難しいな。

 結深のことはもう妹だからという理由だけで異性として見ないと決めた……はずだが、やはりまだ俺の中で結深が妹という感覚が抜けきっていないのか、もしくは一つだけとは言え年下だからそういった対象としては見れないのか、とにかく結深に抱きしめられた時にはこんな感覚は無かった。

 この感覚を一言で表すとするなら……


「……結深の時とは違って、異性に抱きしめられてる感じが強い」

「そっか……私、いつか制服なんて脱いで、一入のこと直接抱きしめたい」

「制服を脱いでって……またこの前みたいに下着姿みたいになって俺のことを抱きしめたいって言いたいのか?」


 俺が前に観雫の部屋に行った時のことを思い出しながらそう言うと、観雫は俺の耳元で甘い声で言った。


「私も一入も、何も着てない状態でってことだよ」

「っ……!」


 観雫に、何も着ていない状態で抱きしめられる……そこまで行かずとも、そもそも何も着ていない状態の観雫を想像するだけで、俺は少し浮ついた気分になってしまった。


「一入の顔赤くなってる、もしかして何か変なこと考えたの?」

「か、からかうな!それより、もう休み時間も終わるからそろそろ俺のことを抱きしめるのをやめてくれ!」

「名残惜しいけど、そうしないといけないよね」


 そう言うと、観雫はゆっくりと俺のことを抱きしめる力を弱め、最終的には俺のことを抱きしめるのをやめた。

 そして、俺と観雫は一緒に屋上から出────ようとした時、観雫は俺のことを後ろから抱きしめてきた。


「一入……私、本気だから……本気で好きだから」


 その観雫の声には、とても強い想いが込められているのがよくわかった。

 これは、しっかりと受け止めないといけない。


「あぁ……伝わってる」

「……」


 そして、観雫が俺のことを離すと、今度こそ俺と観雫は一緒に屋上から出て行った。

 その後、今日一日の授業が終わって放課後になると、観雫が言ってきた。


「今日は結深ちゃんが直接放課後は私と遊ばずに帰ってくるように言ってたから、変に刺激しちゃわないためにも遊ばないほうがいいよね」

「そうだな」

「結深ちゃんと何もしないで、なんて私に言う権利はないけど……もし結深ちゃんと少しでも進展があったら、私に教えてくれない?」


 告白してくれた相手に何も言わずに他の異性との関係を進めるというのはあまり良いこととは言えないため、これは観雫の言う通りにすべきだろう。


「わかった、そうしよう」

「ありがとう」


 その会話を最後に今日は観雫と別れ、家に帰ると俺は結深に出迎えられた。


「おかえり!お兄ちゃん!今日は朝私が言った通りに観雫さんと遊ばず真っ直ぐ帰ってきてくれたんだね!」

「あぁ、そうだ」


 そう言いながら靴を脱いだ俺に対して、結深は言った。


「じゃあ、ご飯食べたら二人でお風呂入ろっか!」

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