第40話 義妹は問い詰める
ひとまず、ちゃんと話をするために玄関からリビングの椅子に移った俺と結深は、結深が口を開く形で話を再開した。
「それで?観雫さんの家に行ったり、観雫さんに抱きしめられたりしたの?」
……この問いに対して、どこまで正直に答えるべきなのかが難しいところだ。
大前提、俺は観雫の家にも行って観雫に抱きしめられもしたわけだが、それらのことを正直に話せばその経緯まで話さないといけなくなってしまい、余計に厄介なことになってしまう。
かと言って、両方とも違うと否定しても、その嘘は結深に見破られてしまうだろう。
少し考えた後で、俺はその答えを口にした。
「確かに観雫の家には行ったが、抱きしめられたっていうのは結深の勘違いだ」
「っ……!」
俺は、半分本当のことを言って半分嘘をつくという答えを取ることにした。
当然、家に行ったというだけでも結深はとても衝撃を受けた表情をしていたが、それでもやはり俺が観雫に抱きしめられたということを言ってしまえば、観雫が俺のことを好きだという可能性が結深の中に芽生えてしまうだろうから、この回答が正解だろう。
だが、さっきも言った通り観雫の家に行ったというだけでも十分な衝撃……結深は、冷たい目をして聞いてきた。
「……観雫さんの家に行って、何したの?」
「何もしてない、話しただけだ」
「高校生が異性の家に行ってその家の香りたくさん付けてきて、ただ話しただけって言われて信じられると思う?」
確かにそれは難しいかも知れない、が。
「俺は事実話しただけだから、それ以外に言えることがない」
「────わかったよ、お兄ちゃんのこと信じてあげる」
「……え?」
結深が意外とあっさり引いてくれたことに驚いた俺だったが、結深は続きを話した。
「その代わり、明日朝お兄ちゃんと一緒に登校して、そのままお兄ちゃんの教室行くから、その時に観雫さんと話させてね」
観雫と話す、か……今結深と観雫が話すのはあまり好ましいことではないが、それでもここで話を引き延ばして結深が直接的な行動に出たりしたらそれの方が厄介だろうし、何より観雫ならどうにか器用にその場をやり過ごすことができるだろうから、その結深の案を採用することにしよう。
「わかった、それでいい」
「────じゃあ、お兄ちゃん」
「……なんだ?」
結深が、真剣な表情で俺のことを見つめてきた────かと思えば、その直後に俺にすごい勢いで抱きついてきた。
「結深!?」
「お兄ちゃんから観雫さんの家の香りがするなんて嫌だから、私の香りにしてあげる〜!お兄ちゃんから観雫さんの家の香りが完全に無くなって私の香りがするようになるまで、ずっとお兄ちゃんのこと抱きしめてるからね!」
「か、勘弁してくれ!」
だが、結深は本当に、しばらくの間俺のことをとても楽しそうにしながら抱きしめ続けた。
その後、一緒にお風呂に入ろうと提案してきたが、それだけはどうにか拒むことに成功して、その日は眠った。
────そして、翌朝。
俺と結深は一緒に通学路を歩いていた。
「お兄ちゃんと登校〜!入学して最初の方は結構してたけど、そのあとは色々と忙しくなって時間合わなくなっちゃったから久しぶりだね〜!」
「そうだな」
その後、二人で雑談を交えながら楽しく登校した俺と結深は、そのまま二人で一緒に俺の教室へとやって来た。
そして、俺の席の前に居る観雫の元へと向かう。
「おはよう、一入────」
観雫はいつも通り俺に挨拶をしようとしてくれたが、俺の隣に居る結深のことを見て一度言葉を詰まらせてから言った。
「と、結深ちゃん?」
名前を呼ばれた結深は、明るい声音で言った。
「今日は観雫さんに確認したいことがあって朝からこの教室に来たんだけど、一つ確認しても良いですか?」
「……うん、何?」
観雫は特に動揺した様子もなくそう聞き返すと、結深は聞いた。
「────昨日、どうしてお兄ちゃんのことを観雫さんの家に呼んだの?」
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