第38話 観雫は安堵する

「み、観雫!?」


 ベッドの上で突然着ている制服のボタンを外し始めた観雫のことを見て、俺は素直に驚いていた。

 だが、観雫はそんな俺の反応を気にすることなくそのまま制服のブレザーを脱ぐと、今度は中に着ていた長袖シャツのボタンを外し始めた。

 そして、観雫が第二ボタンを外したところで、そのシャツから水色の下着と観雫の胸元が少しだけ見えた────その瞬間、俺はまだボタンを外そうとする観雫の手首を軽く掴む。


「観雫、何をしてるんだ?観雫が俺のことを好きだってことをわかって欲しいって話じゃ無かったのか?」


 俺がそう聞くと、観雫は首を傾げて言う。


「そうだよ?」

「そうだよって……だったらどうして何も言わずに服を脱ぎ始めるんだ?俺はてっきり、また何か話があるんじゃないかと思ってたんだが」

「確かに話したいことはいっぱいあるけど、話ならわざわざベッドに一入のこと連れてこないし、何より話すだけじゃ私が結深ちゃんよりも一入のことが好きだってことをわかってもらえないでしょ?」


 ……観雫にも色々と考えはあるみたいだが、俺はさっきから気になっていることがあったためそれを口にする。


「……とりあえず、ボタンを閉じてくれないか?さっきから目のやり場に困ってるんだ」


 見ないように見ないようにとはしていても、常に視界に下着と胸元を捉えていれば、どうしてもそっちの方に意識が行ってしまう。

 だが、観雫は少しだけ口角を上げながら言う。


「困る必要ないよ、私は一入にならどれだけ見られても良いよ……ううん、見るだけじゃなくて」


 そう言いながら、観雫は俺の観雫の手首を掴んでいる手を掴むと、その手を自分の胸元に近づけて言った。


「どれだけ触られても良いよ」

「っ……!」


 そう言われた俺は、咄嗟に自分の手を観雫から離す。

 今までなら度が過ぎたからかいだということもできたが、観雫に告白された今となってはそれを単なるからかいとして受け取ることもできないし、そんな受け取り方をするのは失礼だろう────かと言って、言われた通りに触るのかと言われればそれもまた素直に頷くことはできない。

 俺がそんなことを考えていると、観雫は再度ボタンを外し始めた。


「ま、待て!」


 だが、そんな俺の声は一切観雫には届かず、観雫はシャツのボタンを外した。

 まだシャツは着ているものの、綺麗な水色の下着と観雫の大きな胸元は俺からも完全に見えている。


「どう?一入、何か思うこととかある?」

「お、思うことなんて────」

「ベッドの上で下着姿まで見せてるのに好きな人から思うことが無いなんて言われちゃったら、私トラウマになっちゃいそう」


 トラウマ……!?

 でも、確かにそういったことは後に大きな影響を与えるというのを聞いたことがある……そんなことを言われたら、嘘をつくことなんてできるはずがない。

 だとすれば、ここで重要になってくるのは俺が本当に観雫の下着姿に対して何も思うことが無いのかどうかということだが────無いわけがない。

 だが、それを俺の意見として伝えるのは少し気が引けるため、範囲を広くして伝えることにしよう。


「そうだな……ほとんどの男子が魅力的だと感じ────」

「他の男子とかどうでもいいから、一入がどう思ったかだけを教えてくれる?」


 とことん逃げ道を無くしてくるな……ここまで来たらもはや逃げ道はないため、俺は正直に答える。


「……魅力的、だと思う」

「……そっか、良かった」


 どこか安堵した様子の観雫は、続けて言った。


「私がどれだけ一入のことを好きなのかってことを、今から教えてあげるね」


 そう言うと、観雫はスカートを履いている足を広げ、中から下着を覗かせながら頬を赤く染めて言った。


「────今この場でこっちの初めてもあげられるぐらい、一入のことが好き……だよ」

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