第37話 観雫は全部好き
────観雫とは高校一年生の二学期に、席が隣になったことをきっかけに仲良くなった。
その時の観雫は派手目な女子たちと一緒に居ることが今よりも多かったから、最初は変に関わらないようにしようと思っていたが、隣の席で軽く話したりすることがあって話してみると、意外と話しやすく、一緒に過ごしていて楽しかった。
それから、一緒に昼ご飯を食べたり遊びに出かけたり、最近で俺の妹に関する大事なことを相談する仲にまでなっていた。
────が、今この瞬間、俺の全く予想していなかった告白を受けると、俺はどうしても衝撃を感じずにはいられなかった。
それでも、告白されて何も言葉を発さないのは良くないということはわかっていたため、俺はどうにか言葉を捻り出して話す。
「観雫が、俺のことを好き……どうして、俺のことを好きになったんだ?」
「どうしてって言われても、いつの間にかとしか言えないけど……やっぱり一緒に居て楽しくて、ふとした時の優しさとか、表情とか────一入の全部が好きになってた……だから、そんな一入と付き合って、二人でずっと楽しく過ごしていきたいなって思ったの」
そう言って、観雫は頬を赤く染めながら俺に明るい笑顔を見せる。
一緒に居て楽しい、優しさ、表情……それらは、俺が観雫のことを魅力的だと思う理由とほとんど重なっている。
「……いきなり告白されても何言ってんのって感じだよね、本当ごめんね」
そう謝る観雫に、俺は全力で首を横に振って言う。
「そ、そんなことは思ってない!」
俺がそう言うと、観雫は小さく笑った。
「ねぇ、隣行ってもいい?」
「……あぁ」
俺がそう返事をすると、観雫はカーペットの上をそのまま移動してきて俺の隣まで来た……観雫と、肩と肩が触れ合っている。
……告白された女子と、その女子の部屋でこんなにも至近距離で話すというのは、さっきまでとは全く違う緊張感を感じてしまう。
「一入は、私のこと全然異性として見てなかったよね」
「……観雫は友達だし、観雫もそう思ってると思ってたから、そんな目では見ないようにしてた」
「私も、一入とはずっと友達のままでも良いと思ってた……けど、結深ちゃんが一入にアタックしてるっていうのを聞くたびに頭がモヤモヤして、やっぱり私も一入のことが好きなんだって確信に変わって、今日の朝一入が結深ちゃんのことを妹だからっていう理由で結深ちゃんのことを異性として見ないのをやめるって言ってて……告白するのはまだまだ先だと思ってたけど、今日しかないって思って告白したの」
「……そうか」
俺が気付いていない間に、観雫もかなり色々と考え込んでいたみたいだ……それなのに。
「俺は、観雫の気持ちに気付くことができず、自分だけ観雫に相談して……最低だな」
「最低なんかじゃないよ、一入は大事な妹と向き合ってて、他のことが見えなかっただけ……ううん、むしろ友達だって思ってくれてた一入のことを裏切っちゃったのは私だから、最低なのは私の方だよ」
「そんなことはない、観雫の言う通り関係性は変わっていくのが自然なことだ、だから観雫が最低なんてことは絶対に無い」
「一入……」
俺がハッキリそう言うと、観雫は小さな声で俺の名前を呟いた。
そして、次に明るい表情になって言う。
「そういえば、私が一入のことを好きになったことについては話したけど、どれぐらい好きかはまだ伝えれてないよね」
「どれぐらい好きか……?好きっていう気持ちはもう十分伝わってる」
「一入を好きなのが私だけだったらそれだけでも良かったんだけど、結深ちゃんも居るからね……私が結深ちゃんに負けないぐらいに────ううん、結深ちゃんよりも一入のことが好きだってことを一入にわかって欲しいの」
「……どうするつもりなんだ?」
「……来て」
観雫は俺の腕を掴んでカーペットから立ち上がると、俺のことを観雫の部屋のベッドに座らせて、観雫もそのベッドに座った。
そして、観雫はカーペットに足をつけるのをやめて完全にベッドの上に座ると、制服のボタンを外し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます