第35話 観雫は伝えたい
翌朝、学校に登校すると、俺は俺の席の前に座っている観雫と挨拶を交わして自分の席に座ると、昨日から観雫にはすぐにでも伝えないといけないと思っていたことを伝えることにした。
「観雫、伝えたいことがある」
「伝えたいこと?」
「経緯は色々とあるんだが────これからは、今までみたいに結深が妹だからっていう理由で結深のことを異性としてみないのをやめようと思う」
「っ……!?」
その俺の発言に、観雫は驚いた様子だった。
……今までと言っていることが全然違うし、観雫からしたら突然すぎるだろうからその反応も無理はない。
観雫は驚いた反応を見せた後、俺の顔を見て少し落ち着いて言った。
「……いきなりで理解追いつかないから、その経緯っていうの教えてくれない?」
「わかった」
────ということで、俺は昨日あったことの一部始終を話した。
すると、観雫は一度頷いてから言う。
「へぇ、妹としてじゃなくてちゃんと結深ちゃんの気持ちと向き合っていくって決めて、跨られてる状態だったのに我慢できたんだ」
「今の話の中でどうして一番最初に出てくる感想がそれなんだ!俺が結深と向き合うって決めた経緯の感想を言ってくれ!」
「純粋に驚いてるんだよ、一入は結深ちゃんがタイプって言ってたから……そう、私とは正反対の、結深ちゃんが」
観雫は、どこか暗い声音でそう言った。
「確かにタイプだが、だからってそんなすぐに気持ちを切り替えて好きになったりはしない……それに、観雫だってそこまで結深と正反対ってわけじゃないだろ?」
「正反対じゃん、私あんなに明るくないし……」
「そうか?二人とも容姿は整ってるし俺に優しくしてくれるし、確かに普段は違うかもしれないけど、一緒に遊んでて観雫が楽しそうにしてる時は十分明るいと思う……その楽しそうな観雫を見れるから、俺は観雫と遊ぶことが好きだ」
「っ……!……私も一入と遊ぶの好きだよ」
観雫は、頬を赤く染めてそう言ってくれた……そして、少し間を空けてから観雫がどこか決意の込もった表情で言う。
「今後の私と一入の関係性に大きく影響することで伝えておきたいことがあるから、今日の放課後────ううん、回りくどかったね……伝えたいことがあるから、今日の放課後時間もらってもいい?」
最初こそどこか緊張感のある決意の込もった表情だった観雫だったが、改めて言い直した時はとても良い笑顔をしていた。
「わかった、今日の放課後だな」
「うん」
────そして、学校で過ごす一日はあっという間に過ぎていき、放課後になると観雫と一緒に学校から出て一緒に歩き始めた。
「今日はどこで話すんだ?」
俺がそう聞くと、観雫は短く言った。
「私の家」
「え……!?」
まさか観雫の家なんて答えが返ってくるとは思っても見なかった俺は、その返答にかなり驚いた。
「私の家で伝えたいって思うぐらい、今日伝えることは大きなことなの」
「そ、そうか」
そうだ……俺は今まで女子の家に行ったことがないから少し変な緊張感を覚えそうになっているけど、観雫は真面目に俺に伝えたいことがあるんだ。
俺も余計なことは考えずにその観雫の伝えたいことを受け止められる準備だけしておこう。
俺がそう自分に言い聞かせて心を落ち着かせようとしていると、観雫が小さな声で俺に伝えた。
「……今日、家に両親居ないから」
「……え?」
それだけ伝えると、観雫は少し早歩きで歩いて行った。
「み、観雫!?」
俺はその後を追いかける形で観雫と一緒に歩いて行き────十分ほどすると、俺と観雫は観雫の家の前に到着した。
「上がっていいよ」
「……お邪魔します」
そして、観雫の家の玄関に上がると、観雫が俺のことを見て言う。
「なんか堅くない?」
「初めて入る女子の家なんだから仕方ないだろ」
そう言うと、観雫は小さく笑って俺のことを自分の部屋に入れた。
……相手が観雫とはいえ、初めての女子の家でその女子の部屋で二人きり────その状況に、俺は今までにない緊張感を抱いていた。
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