第33話 義妹は満たしたい

「観雫としたことを忘れさせる……?結深、何か勘違いしてないか?俺が観雫としたのは────」

「この際、お兄ちゃんと観雫さんがしたことなんてどうでもいいよ、今から私がお兄ちゃんのことを満たしてあげるから」


 ……どうして突然こんなことをするのかと思えば、そういうことか。

 俺はご飯を食べさせられたり手を繋いだりしたことを大きいことと答えるかどうかで悩んでいたが、結深はそのずっと先のことだと考えているみたいだ。

 結深は相変わらず目を虚にしながらも表情は恍惚とした表情をしていて、そのまま着ていた制服を脱ぎ始める────が、俺はしっかりとおそらく結深が勘違いしていることを説明する。


「結深は勘違いしてる、俺と観雫は結深が思っているようなことはしてない」

「女と関わってないって嘘ついてたお兄ちゃんの言葉なんて信じれない」


 そう言うと、結深はブレザーを脱いで今度は長袖シャツのボタンを外し始めた────俺は、その結深の手を止める。


「前に結深だってこんな強引な方法は嫌だって言ってたはずだ、だから一度こんなことはやめてもっと冷静に話し合おう」

「お兄ちゃんが他の女としちゃったなら、もうそんなこと言ってられないよ……私は、今すぐにでもお兄ちゃんのことを私だけで満たしたいの」


 前も似たような状況で同じことを言った時、結深はその日だけは俺の妹だということを受け入れてくれた……だが、今はもうその言葉が届かないほどに結深は精神的に追い詰められている。

 俺が次の言葉を発し────ようとした時、俺は思わず固まってしまった。

 その理由は、結深が長袖シャツのボタンを全て外し、中から下着を見せたからだ……まだ長袖シャツを着てはいるものの、ボタンが外れているせいで結深の着ている大人びた黒の下着に、その下着から少し見えている大きな胸元。

 それは、俺が固まってしまうには十分すぎるほどに大きな刺激だった。

 そんな中、結深は頬を赤く染めながら俺に顔を近づけてきて甘い声で言った。


「どう?お兄ちゃん、私の体……お風呂の時はタオル巻いてたからわかりづらかったと思うけど、結構大きいでしょ?私が妹だからって何も我慢しなくていいんだよ?私たちに血の繋がりはないし、私はお兄ちゃんのことが大好きなんだから……お兄ちゃんさえ頷いてくれたら、お兄ちゃんの好きにして良いの」


 ────俺が今固まっているのは、別に結深の体が魅力的だからというわけではない。

 正確には、確かに体が引き締まっていて胸元も大きいから体が魅力的じゃないかと言われれば嘘になるが、俺が固まってしまっている原因の刺激というのはそれらのことではなく────妹の下着姿を見てしまったという事実そのものだ。


「それとも、お兄ちゃんはまた兄妹だからって言って自分にも私にも素直にならないの?」


 きっと、本当に生まれてから一緒に育った兄妹で、血の繋がりもあるんだとしたら妹の下着姿を見るぐらいきっと何もショックを感じないんだろう……そして、俺も結深と兄妹だと言うならそうあるべき────なはずなのに、俺は結深の下着姿を見てしまったことにショックを受けている……これは、どうしてだ?


「お兄ちゃんが素直にならなかったとしても、私は素直にさせてもらうけどね」


 俺と結深の唯一の繋がりである兄妹……血の繋がりがあったなら今回のようなことがあったとしても問題ないが、血の繋がりがない義兄妹という状態で結深の下着姿を見てしまったとなれば何か意味が生まれてしまうのではないか、そして意味が生まれるということは俺と結深の義兄妹という関係に不純物が入り込むということだ。

 ────そうなったら、俺と結深を繋ぐものは無くなってしまう。

 そう考えるだけで、動揺や恐怖から心臓の鼓動が速くなる。


「素直にするってことは、次に私はこの下着を脱がないと────」


 俺は、上体を起こすと俺の上に跨っている結深の両肩に手を置いて言った。


「結深、お願いだ……俺のことを、ずっと結深のお兄ちゃんで居させてくれ」


 そう伝えた俺の声は少し震えていて、おそらく心の中の動揺が表情にも出てしまっていただろう。

 そして、それを聞いた結深は────

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