第20話 義妹は確認したい

「おかえり!お兄ちゃん!」

「ただいま、結深」


 家に帰ると、結深がいつも通り明るく元気に出迎えてくれた。

 俺は、何気にこの二人の兄妹って感じの時間が好き────と思っていると、結深はそのまま俺に抱きついてきた。


「結深────」

「家の中だから平気だよ……妹がお兄ちゃんのことを抱きしめるなんて、仲の良い兄妹なら普通なんだから」

「それは……そうかもしれないが」

「それに、家の中で抱きしめたらダメって言われちゃうなら、私家の外でもっとお兄ちゃんのこと抱きしめたくなっちゃうかも」

「……ちょっとだけだからな」

「やった〜!」


 その後、結深は楽しそうにしながら時々「はぁ、結婚したい……」なんて呟きながら俺のことを抱きしめ続け、三分ほど経つと一度満足したのか俺のことを抱きしめるのをやめて、俺と結深は一緒にリビングで結深の作ってくれた料理を食べ始めた……それから少しの間美味しくその料理を食べていると、結深が少し暗い声音で言った。


「そういえば、最近お兄ちゃんまたちょっと帰り遅くなることあるよね……お友達とどこかに遊びに行ってるの?」

「そうだ」

「……お兄ちゃんが女の子と関わってないって言ってたから今まで聞いて来なかったけど、そのお友達って女の子じゃないよね?」


 それを聞かれた瞬間、ご飯を食べすすめていた俺の箸が止まった。

 果たして、これに関してはどう答えるべきなんだろうか。

 本当のことを伝えて「実はその友達っていうのは女の子なんだ」なんて答えたら結深のことを刺激することになってしまうだろうし、かと言って「あぁ、友達は女の子じゃない」って嘘をついたとしても後が怖いから、どっちにしても角が立つ……が、もう俺は一度女の子と関わっていないと嘘をついている。

 それなら、ここで結深のことを刺激させてしまうよりも、嘘をつく方が良い。

 ……嘘をつくのは胸が痛むが、これは仕方ないことだと割り切るしかない。


「あぁ────」

「なんて、こんなこと聞いても意味ないよね、私前お兄ちゃんが女の子と関わってたらもっとお兄ちゃんにアタックするって言っちゃったから、お兄ちゃんのお友達が女の子だったとしても、お兄ちゃんは男の子だって答えるもんね」


 ……的確に俺の考えを読んでいて、これに対しては俺は何も言うことができない。

 少しこの場に沈黙が生まれると、結深は閃いた様子で言った。


「うん!私決めたよ!今まではお兄ちゃんの学校生活を邪魔したら悪いとか、私自身の高校生活での友達作りとかを優先してたからしてこなかったけど、お兄ちゃんが女の子と関わってる可能性があるんだとしたら私としてはそのことを確認しておきたいから、明日学校でお兄ちゃんの教室行ってみよっかな」

「え……!?」


 結深が……俺の教室に来る!?

 ……だが、確かに考えてみれば、こんなにも俺と結婚したいと言ってきている結深が、わざわざ俺と同じ高校にまで進学したのに俺と接触してきていないのが逆におかしかったんだ。


「どうしたの?そんなに驚いて……何か、やましいことでもあるの?」


 そう言って俺の目を見てくる結深に対して、俺はすぐに答える。


「そ、そんなわけないだろ?今まで無かったことだから、ちょっと驚いただけだ」

「中学生の時とかはお兄ちゃんの教室に行くみたいなことしたくても、そもそも学校自体が違うくてできなかったからね……でもそっか〜!私、明日お兄ちゃんと学校でもお話できるんだ〜!楽しみだね、お兄ちゃん!」

「そうだな……結深は、何限目の休み時間に来るんだ?」

「朝は色々と大変だから……三限目の休み時間とかかな?」

「……そうか、わかった」


 その後は結深と一緒にご飯を食べて、色々と考えながらも基本的には普段通りに過ごし────次の日になると、俺はいつもよりも早い時間に学校に登校して、俺の席の前に座っている観雫に後で結深がこの教室に来ることに関して相談することにした。

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