第13話 義妹はお兄ちゃんの妹
「既成事実って……結深、俺たちは────」
「そんなことをしたらダメって言うんだよね?兄妹だから」
結深はさっきの頬を赤く染めて妖しい笑みを浮かべていた表情から一転して真面目な表情でそう言いながら制服のブレザーを脱いだ。
俺は、小さく頷いて言う。
「……そうだ」
もし俺が結深とそういうことをしてしまったら、結深から兄妹という存在が居なくなってしまう。
結深本人にそんなことを言ったとしてもそんなことは気にしないと言うだろうし、俺も自分の存在を大きな存在と示したいわけでもない────だが、それでもやはり今まで色々なところを転々としてきて、学力も運動能力もルックスもとても優れている結深には、家族としての愛が必要だと俺は考えている。
「お兄ちゃんは優しいから、私のお兄ちゃんで居続けようとしてくれてる……それは、形式的な意味だけじゃなくて、もっと深いところの意味も含まれてる……でも、今の私にとってそれは────」
結深は何かを言いかけたところで、首を横に振ってその続きを言うのをやめた。
「結深?」
「……何でもないよ、とにかく、早く既成事実作っちゃうね」
そう言って、次にブレザーの中に着ていた長袖シャツのボタンを外そうとする結深の右手を、俺の右手で止めて言った。
「結深、やめてくれ……本当は、結深だってこんなことしたくないんだろ?」
「また私がお兄ちゃんのことを大好きだって気持ちを否定するつもりなの?私はお兄ちゃんと結婚したいし、えっちだってしたい!どうしてそのことをわかってくれな────」
「それはもう十分にわかった、俺がそれを受け入れるかどうかは別としても、結深が俺と結婚したいとか、そういうことをしたいって思ってるのは本当なんだと思う……だから、さっきそれを軽視するようなことを言ってしまったことは謝る、悪かった」
「……だったら────」
「結深にここまでの強引な手段を使わせたのは俺のせいだ、でも……結深は、本当はこんな強引な方法でそういったことをしたくないんだろ?」
結深は、確かに俺のことを異性として好きだと思ってくれているのかもしれないが、だからと言って既成事実を作るための行為をするなんて、結深の性格を考えればそんなことはしたくないはずだ……結深は元々俺に優しいし、その行為をするにしてもそこに含まれた気持ちの方を重んじる……それが結深だ。
だからこそ、そんな結深にここまでのことをさせてしまったのは俺のせいだと、俺は改めて反省する。
俺が問いかけた後、結深は一度俺の目を見て────その後、諦めたように一息ついて言った。
「……うん、私はこんな強引な方法でお兄ちゃんと行為をすることなんて、本当はしたくないって思ってる……でも、どうしてわかったの?」
体から力の抜けた結深のことを俺の上から降ろしてソファに座らせ、俺も体を起こすと結深の方に手を置いて言った。
「それは、俺が結深のお兄ちゃんだからだ」
「っ……!」
そう言うと、結深は一瞬目を見開き、続けて頬を赤く染めて俺に微笑みかけるように言った。
「まだ、私はお兄ちゃんの妹みたいだね……今日だけは、お兄ちゃんの妹で居よっかな」
「結深……」
そして、結深は立ち上がって俺のことを見て笑顔で言った。
「でも!明日からはまたお兄ちゃんの妹じゃなくて、お兄ちゃんの将来のお嫁さんとして頑張るから、覚悟しててね!」
「勘弁してくれ」
なんて言いながらも、俺はおそらく今の結深と同様に笑顔になっているんだろうと思う。
言葉にするのは難しいが、なんだか今までよりもさらに結深と仲良くなれた気分だ。
その後、俺と結深は一緒に食べかけの夕食を食べ、一緒に映画を観て、一緒にトランプをして過ごした。
今日は本当に結深と兄妹らしく過ごせて嬉しかったな────と思っていた俺だったが、今回の件でより俺と結深の仲が深まったことにより、今後結深による俺へのアタックはさらに加速していくこととなった。
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