第9話 義妹は脱がせて欲しい
「脱がしても良いって……結深?何を言ってるんだ?」
普段なら大声を出して驚いているところだが、今は大声を出してはいけない状況なため、俺は大声は出さなかった……が、声音だけでも動揺は読み取れるだろうし、心の中では動揺だけでなく驚愕もしている。
何故なら、今まで結深は俺に対して口で結婚したいと言ってくることがあっても、直接的にこういうことをしてくることはほとんど無かったからだ。
ほとんど、というか、少なくともここまで物理的にも内容的にも直接的なのは初めてかもしれない。
「何って、私のこと脱がしても良いよって言ってるんだよ……ううん、脱がせて欲しいって言ったほうが正確かな」
「……妹に対してそんなことできるわけないだろ?」
「妹に対してだったらできるはずだよ、お兄ちゃんが妹の服を脱がせてあげるなんて、きっとよくある話だよ」
「あったとしてもそれは幼少期までで、今となっては高校生同士になった俺たちがするようなことじゃない」
「……お兄ちゃんが私のこと女として見てるってわかったから、今日はもう良いかな〜」
そう言うと、結深はこの試着室から出ようとした────が、俺はそんな結深の手首を握る。
「私、お兄ちゃんのお望み通りに何もせずに試着室から出てあげようとしたのにどうして止めるの?」
止めた理由は当然、結深の発言に対して疑問を持ったからだ。
「俺が結深のことを女の子として見てるってどういうことだ?」
「言葉通りだよ!お兄ちゃんは私のこと女として見てるから、私のこと脱がせられないの、もし本当に妹だって思ってるならちょっと恥ずかしくても脱がせるぐらいはできるはずだよ?それができないってことは、お兄ちゃんが私のことを女として見てて、私の体を見たら女として意識しちゃって恥ずかしいからってことだよ!」
「違う、俺は────」
「仕方ないお兄ちゃんのためにちょっとだけ待ってあげるから、否定したいなら行動で示してね」
そう言って結深は俺の方を向くと、俺がいつでも制服のボタンに手をかけられるようにした。
……改めて向き合ってみると、本当にとても整った顔立ちをしていて、高校一年生とは思えないほどのスタイルを持っていて、我が妹ながら本当に何から何まで俺のタイプだ。
もし妹でもなんでもなく、最初から完全な異性として俺の目の前に現れていたら、俺は結深に一目惚れしてしまっていたかもしれない……そう思わせるほどに結深は俺のタイプ。
だが、残酷なことに結深は妹で、俺は結深の兄だ……だから俺は、兄としての務めを果たす。
「……えっ?」
俺が結深の頭を何度かポンポンとすると、結深は驚いた様子だった。
そして、俺は言う。
「結深は俺の妹なんだから、例えどんな理由があったとしても脱がせたりできるわけがない」
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!この流れでそんな無理矢理私のこと妹扱いするの!?ありえな────」
口答えしようとする結深の頭を、今度は撫でる。
すると結深は、口元を緩ませて言った。
「はぁ、お兄ちゃんに頭撫でられるの好き────じゃなくて!ちょっとお兄ちゃん!子供扱いしないでってば!」
すぐに正気に戻った結深だったが、俺はさっきの結深の表情を見て確信した。
「結深は俺の大事な妹だから、やっぱり俺は、結深にそういうことはできない」
そう伝えると、俺は結深よりも先に試着室から出た。
「ま、待ってよお兄ちゃん!私はただ、お兄ちゃんに妹じゃなくて、もっと自由にお兄ちゃんのことを好きって気持ちを伝えられるようになりたいだけなのに……もしかしたら、私が思ってる以上にアタックしないと、お兄ちゃんは私のこと妹としてしか見てくれないのかな……」
その後は特に何かおかしなことはなく、結深と一緒に軽くショッピングモールの中を見て回り、ご飯を食べ終えると家に帰宅した。
少しハプニングはあったが、結深と出かけるのはやっぱり楽しかったな。
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