第5話 観雫は困惑する
「観雫、昨日で色々と話が進んだ」
「ん、聞かせて」
翌日になると、俺は早速いつもの教室の席で、観雫に昨日あったことを共有することにした。
昨日も色々と結深とは話をしたが、とりあえず一番最初に観雫に伝えるべきなのは、やはり観雫に関係のあることだろうと思った俺はそのことについて話し始める。
「ちょっと面倒なことになってしまったんだが、一言で言えば俺と観雫が関わってることを結深にバレたらいけなくなった」
「え……?何それ」
俺は、その経緯を観雫に伝える。
結深は俺の周りに女の子が居ないと思っているからこそ今はまだそこまで俺にアタックしてきていないが、もし俺の周りに女の子が居るとなれば、もしかしたらその女の子が俺のことを好きかもしれないからもっと俺にアタックしてくるようになる……だから、俺と観雫が関わっていることをバレてはいけない。
そのことを伝え終えると、俺は最後に付け加える。
「悪いな、観雫が俺のことをそういう意味で好きなんかじゃ無いってことはわかってるんだが、やっぱり結深に俺たちの関わりがバレるのはあまりよくない」
「……」
その後、観雫は体や視線までもを全く動かさなかったため、俺は観雫に話しかける。
「観雫?」
「……ごめん、えっと、要するに私たちの関わりがバレなかったら良いんだよね?」
「あぁ、そうだ」
一瞬様子のおかしかった観雫だったが、すぐに今の話をまとめてそう言った。
……理由はどうあれ、俺たちの関わりを隠さないといけないというのは少し精神的に負担になるかもしれないため、俺はその部分をフォローするように言う。
「でも、今まで遊びに出かけたりしてても結深にはバレなかったんだ、そうそうバレることはない」
「うん……じゃあ、私って一入の家行けないの?」
「家……?あぁ、家は結深が何かの理由で出かけたりしてないと行けないと思う、とは言っても今まで俺の家で遊ぶようなことはなかったし、今後も俺の家に観雫が来るなんてことはあまり考えられないな」
「そう、だよね……何なの、これ……」
観雫は自分の胸元に手を置いて、困惑している様子だった。
胸が苦しいとかそういった様子ではないが……
「大丈夫か?何か体調不良なら、保健室に連れて行く」
「体調は大丈夫……心配してくれてありがとう」
観雫は、優しく微笑みかけるようにして言った……観雫は普段あまりそういった表情をしないが、俺と一緒に遊びに出かけている時なんかはよく明るい表情を見せてくれるから、観雫と遊びに行くのは俺にとって本当に楽しい……だが、何か違和感を感じ────ると思った時、机に手を置いた観雫は、俺のことを急かすように言った。
「それより、何か別のこと話さない?この話題だと、なんか変なこと考えちゃう、私」
「そうか……?よくわからないが、そういうことならさっきは別に伝えなくても良いかと思って伝えなかったんだが、昨日結深と話したことで難しい話があったんだ」
「どんな話?」
俺は、昨日結深と話したことを思い出しながら言う。
「もし仮に、俺が結深のいやらしい姿とか、結深のスタイルがどうとかって思って変な欲求とか感情を抱いたら、それは不純だと思うか?」
俺がそう聞くと、観雫は即答した。
「妹にそんなこと思うのは不純だと思うよ」
当然、俺もそう思っているため、それに頷いて、いよいよ昨日俺には答えることができたかった本題を口にする。
「じゃあ結深が────」
「ちょっと待って」
俺が続きの本題を話────そうとした時、観雫がそれを遮るように待ったをかけてきて、真面目な表情で聞いてくる。
「ねぇ、一入が妹の結深ちゃんに対してそういう欲求とか感情を抱いて不純になるなら、もし……友達が友達に対して、ずっとじゃないけどたまに手繋ぎたいとか、抱きしめ合ってみたいとか……それ以上のことをしたいって思うのは、不純?」
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