第3話 義妹は妄想が激し過ぎる

「は……!?何言ってるんだ!?」


 結深の行きすぎた発言に対してそう反応を示すと、結深は口角を上げたままの表情で言った。


「私何かおかしなこと言ってるかな?高校生と中学生じゃえっちなこととかしたらダメって感じだと思うけど、高校生同士だったらしても良い────そ、それとももしかして、お兄ちゃんは中学生の私と……!?その線は考えてなかったよ〜!でも、背徳感っていうことで言うなら別の面で────」


 勝手な想像が加速していきそうな結深の妄想を遮るようにして俺は言う。


「そんなこと言ってないし思ってもないからそんな線は考えなくていい!俺が言いたいのは年齢どうこう以前に、そもそも俺が結深とそんなことするわけないってことだ」

「するわけない……?どうしてそう言い切れるの?」


 当たり前のことだからわざわざ口にするのもおかしな話だが、ここは結深の兄としてしっかりと伝えないといけない。


「俺たちが兄妹だからだ、兄妹はそういうことをしたらダメなんだ」

「私たちの血が繋がってるならお兄ちゃんの言い分も通るかもしれないけど、私たちは義兄妹だから通らないよ、今お兄ちゃんの目の前に居るのは一人の女の子で、今私の目の前に居るのも一人の男の子……それだけだよね?」

「俺たちは家族だ、そんな簡単に片付けられる関係性じゃない」

「お兄ちゃんと私が結婚したとしても家族の形が家族愛から恋愛に変わるだけだよ、それってそんなに問題なのかな?」


 結深は、俺の言っていることが全然わからないといった表情で言った。

 ……結深の「結婚したい」という発言が、まさかここまでのものとは思ってもいなかったが、とりあえずわかったことは────結深は本気で俺と結婚したいと思っていて、そのことに対して何の引け目も感じていない、どころかとても積極的らしい。

 ……今日は、ひとまず結深の考えを大きく知れたことで満足しておくことにしよう。


「この続きを話し出すと長くなりそうだから、また別の機会にしよう」

「わかった!お兄ちゃんとご飯を食べてるこの時間も大切だからお兄ちゃんの言う通りにする!!」


 結深は、明るい笑顔でそう言った……本当に、ただの妹で居続けてくれるなら、俺にとっては本当に理想的な妹なんだけどな。

 その後、結深と一緒にご飯を食べ終えてお風呂に入ると、今日はすぐに眠ることにした。

 明日は観雫に今日のことを報告して、一緒に対策を考えよう────そして、翌日の朝、学校の教室。

 俺が自分の席に着くと、俺の席前に座っている観雫が椅子を反対にして俺の方に向き直らせて言った。


「おはよう、結深ちゃんのことで何かわかった?」

「おはよう……あぁ、結深の思っていることの大部分がわかったと思う」


 俺は、昨日結深と話したことを一部省略したりしながら観雫に話した。

 それを聞き終えた観雫は、頷いて言う。


「なるほどね……じゃあ、結深ちゃんの結婚したいっていう言葉の意味は、本当にそのままの意味で、結深ちゃんは血が繋がってないからっていうことを言い分に一入と結婚したいって思ってるんだ」

「あぁ、だから今日は、どうすればその結深の思考を変えることができるのかを一緒に話し合いたい」

「わかった……でも、いきなり思考の大元を変えるのは難しいと思うから、まずは外堀から埋めないとね」

「外堀……?」

「うん、きっと結深ちゃんは今、一番身近な異性の一入のことしか見えてないんだと思う……だから、この世界には他にいくらでも男は居るってことを教えてあげないといけない……そんな当たり前のこと、って思ったかもしれないけど、それを伝えるのも兄の役目だと思うよ」


 ……結深の場合は今までの環境も少し特殊だからな、確かにそういうのを教えるのも俺の役目なのかもしれない。


「わかった、今日帰ったら伝えてみる」

「うん……ねぇ一入、今日の放課後────」


 観雫は何かを言いかけたところで、それを言うのをやめた。


「観雫?」


 俺が観雫の名前を呼びかけると、秘桜は小さく笑って言った。


「ううん、何でもない……一入は結深ちゃんのことで忙しいもんね……本当、何でもないから」

「そうか、なら良いんだ」


 ……どこか観雫の表情がぎこちなかったような気もするが、本人がそれ以上何も言う気がないのであれば、それ以上は踏み込まない方が良いだろう。

 学校での時間を終えて放課後になると、俺はすぐに家に帰った。

 そして、家に帰ると結深が俺のことを出迎えて言った。


「おかえり!お兄ちゃん!早速なんだけど、今日一緒にお風呂入らない?」

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