本編1 これが僕らのセカンドライフ その4
(聖女様、起こすべきだろうか)
軽くゆすってみるが起きる気配がない。
そうこうしてるうちに僕にもメイドさんが案内をしにきた。
「剣士様、こちらへどうぞ。お付きの方も。」
「あ、はい。」
しょうがない。聖女様はおぶっていくか。
「剣士様はどちらの所属を希望なのですか?」
「僕は元の世界への帰還希望です。」
「では、こちらへ。」
希望を確認されてからドアの前に案内される。
(緊張するな。)
ノックをしてから部屋に入る。
部屋には小柄な中世的な顔立ちの人がいた。この人が代表なのか?
「やあ!君か。見てたよ、さっきの。中々の機転だったね。君達があのカエルの習性に気づいて無かったら今頃、背中の彼女は溶かされてるね。」
「あ、ありがとうございます。人の呼吸ですか?あのカエルが感知しているの。」
虫も殺しそうに無い顔なのに、この人を見ているとさっきから冷汗が止まらない。
「そうそう。あのカエルは視力も聴力も良くない。獲物が排出する二酸化炭素を感知して狩りをしてると言われている。それと、そんなに緊張しないでよ。君みたいな優秀な子は大歓迎なんだから。ところで君と背中の彼女は何ができるんだい?」
「僕は…斬撃を飛ばすことが出来ます。彼女は簡単な怪我の治療が。」
「ふむふむ。他には?」
「えっと…それだけです。」
「ふむふむ・・・はぁ!?」
一瞬重苦しい威圧感が薄れた。後ろで控えてるメイドさんも『噓でしょ!?』という目で見てる。
「えーと・・・本当に?」
「は、はい。」
「君、よくそれで生き残ったね。というか、それでよく世界救えたね。ちょっと背中の彼女にもお話聞きたいから起こしてくれるかい?」
「さっき起こそうとしたのですが…聖女様、聖女様!」
呼びかけながら、おぶってる聖女様を揺らす。
「う…ううん。」
うっすらと聖女様の目が開く。
「おはようございます。聖女様。今、元の世界への帰還希望側の組織の面接中なのですが、聖女様にもお話を聞きたいそうで。」
「え、は・・・わ、私、す、すみません!」
自分がどういう状態か認識した聖女様が顔を真っ赤にして背中で暴れだした。
「っわ、い、今下ろしますから。」
そっと床に立たせてあげると、恥ずかしさからなのか、恐縮して随分と小さく見える。顔も真っ赤のままだ。可愛いなぁ。
「やあ、聖女様。ちょっと聞きたいことがあるんだがいいかな?」
ニヤニヤしながら代表が話しかける。
しかし次の質問で笑みは消え顔が鋭くなった。
「君と隣の剣士君は何ができる?特別な装備は持っているか?」
疑われているのか…同じ質問をされる。緊張が走った。
聖女様は僕の横顔をチラッと見てから
「えっと…私は怪我の修復とかが出来ます。彼は・・・攻撃を飛ばすことが出来ます。特別な装備と言いましても、彼の持ってる剣は私の王家に伝わる宝剣ということぐらいで、特別な力とかは・・・」
「怪我はどの程度直せるんだい?欠損した部分を生やしたりとかできるのかい?」
「あの…ちょっと難しいです。」
代表は『ふぅ…』とため息を付き、僕の方に向き直り探りを入れるような目で
「転生の時に君に姿を見せた神様はどんなだった?」
「えーと…神様って複数居るのですか?」
答えを聞いた代表は暫くじっと僕たちを見つめてから、
「はぁ~。まぁいいや。判断力もあるし採用って事で。組織のルールとかは追々メンバーに聞いてね。」
答えながら後ろに控えてるメイドに目配せする。
「お二方、こちらへ。拠点に案内します。」
メイドさんに促され、僕たち二人は代表に会釈してから部屋を後にした。
薄暗い廊下をメイドさんは僕たちを先導し、こちらを見ずに語りかけてくる。
「代表はルールと言いましたが、至って簡単です。縦社会であること。そして組織への貢献度が大きいものは全てを得て、貢献度が少ないものは全てを失います。」
「えっと、それはどういう…」
聖女様がおずおずと聞き返す。
「言葉通りです。これ以上のことをここで説明する権限を頂いて居りませんので、これ以上は拠点に着きましたらお尋ねください。」
縦社会というのが透けて見えるな。
たがこれだけは聞いておかねば
「あの、すみません。どのように貢献が決まるのですか?」
「毎月、貢献度が神様よりポイント・ランキング形式で発表されますのでそれを参照にしています。個人で累計がたまれば個別で帰還できるなどと言う噂もございますが確認されておりません。」
「その貢献度は相手を…その…殺したりとかで溜まるのですか?」
「ダメージ、殺害、回復、バフ、デバフ、諜報、荷運び、生産・・・多くのことで溜まりますが戦闘関連が多いです」
(意思統一をしろと言った神様が戦闘関連で貢献度を図ってると言うことは、つまり元から…)
メイドさんが扉を開き小部屋に案内する。
「さあ、こちらのポータルへどうぞ。」
通された小部屋には青白く光る魔法陣がある。隣にいる聖女様の手を取り目配せしてから一緒に魔法陣の上に立った。魔法陣の光が強くなり身体が転移する感覚がある。
「これからどうなるんでしょう。殺し合い…しなければならないのでしょうか…」
聖女様がつぶやく。その質問に僕は答えられない。
最後、転移する瞬間、案内してくれたメイドさんの表情が気になった。
(あれは…憐れみ?)
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