第49話─取り戻した誇り
無事ビリーを撃破したユウは、彼のタンクトップを掴み引きずりながら奥の部屋へと向かう。廊下を進み、分厚い金属の扉で守られた最奥の部屋に到達した。
『匂いはこの中からしますね。それじゃあ、よいしょっと!』
ユウはパンチを叩き込んで扉を破壊し、部屋の中に入る。そして、保管されていたマジンフォンとファルダードアサルト、アドバンスドマガジン入りのホルスターを取り戻すことに成功した。
『ああー、やっと取り戻せましたー。おかえり、ボクの大切な武器たち……っと、感動するのは後ですね。まずは……』
【0・0・0・0:ソウルデリート】
『これでよし、と。さ、もうこんなところに用はありませんし帰り……あれ?』
紆余曲折を経て装具を取り戻したということもあり感動もひとしお、といったところのユウだが、すぐにビリーをマジンフォンの機能で消滅させた。
目を覚まされると厄介なことになるため、さっさとノルマを達成しておいたのだ。これでもうやることはないと、基地を脱出しようとするが……。
『パパから着信……? もしもし、ユウです』
『あ、ユーウー? よかったぁ、やっと出てくれた! もう百回くらい電話したよ。この前相談に来た例の案件、無事解決したから連絡させてもらったよ!』
『本当ですか!? じゃあ、ついにアストラルに対抗する能力が』
「そんなものをお前の手に渡らせるわけには……いかない。役立たずどもに代わって……私がお前を沈黙させる」
『わひゃっ!?』
リオからの着信が入り、応答するユウ。その最中、突然どこからともなくアストラルAがテレポートしてきた。不意を突かれたユウは、壁に蹴り込まれてしまう。
『ユウ!? どうしたの、凄い音したよ!? 大丈夫!?』
『ケホッ、なんとか……。空気を読んでくれない、今ホットな話題のアストラルAが襲ってきまして。早速、パパのアイデアを使う時が来ました!』
「……ユージーンが到着する前に様子を見ておこうと、先行して来てみれば。新たな姿を得たユウ・ホウジョウがいるとは、どうなっている?」
勢い余って壁を突き破り、隣の部屋に転がり込むユウ。その時の破砕音が聞こえたようで、リオは心配そうに安否を問う。
再生能力で傷を治しつつ、現在の状況を伝えるユウ。一方、アストラルAは拳の魔神となったユウを見て首を傾げていた。
『ボクは強くなったんですよ、グランザームさんに稽古してもらいましてね。もうお前なんかに負けません、ギッタギタにしてやるので覚悟してください!』
『おー、殺っちゃえ殺っちゃえ! あ、そのための新機能! ユウのマジンフォンに一足先に転送しておくよ! おニューのサポートアプリ、その名も【モータルエンド】をね!』
リオが電話越しにそう口にすると、マジンフォンの画面に変化が現れる。テンキー画面が左にスライドし、新たに現れた待ち受け画面にカエルの頭の形をしたドクロのアプリアイコンが出現した。
『今は通話中だから確認出来ないだろうけど、新しいアプリを入れておいたよ!』
『ありがとう、パパ! ちなみに効果はどんな感じです?』
『トドメを刺した相手が、安全な場所に魂を隔離してる場合にね。キョーレツな猛毒を肉体から魂に伝播させて、有無を言わせず消滅させちゃうんだ! 身体がキカイでも関係なくね! あ、でもアストラルにしか効かないから気を付けてね!』
『そんなとんでもないものを作っちゃうなんて、パパたちは天才です! ありがとうございます、有効に使わせてもらいますね!』
リオはアストラルの特徴を聞いた後、妻の一人……毒を司る【鎧の魔神】レケレスに協力を仰ぎ、対策アプリの開発を行った。
その結果、肉体との繋がりを介して魂を滅ぼす猛毒の力を宿したアプリ……モータルエンドを作り出すに至ったのだ。
部屋に乗り込んできたアストラルAの攻撃をかわしつつ、ユウはお礼の言葉を述べ通話を終える。そして、アストラルAとの因縁にケリをつけるべく攻勢に出た。
「抵抗は……無意味だ。私が到着してから一時間もしない間に、ユージーンが来る。逃れることは出来ない、大人しく倒れるがいい」
『そうはいきません、お前を倒しておさばらしてやりますよ! 食らいなさい、ストレートスマッシュ!』
「む、ぐっ!」
アストラルAの振るうジャベリンを身体を仰け反らせて避け、ユウは反撃の正拳突きを叩き込む。吹っ飛ばされたアストラルAは、装具が保管されていた部屋に逆戻りした。
その間にユウは、取り戻したマジンフォンを右腕に近付ける。すると、通常時とは逆にガントレットの内側に収納された。
『これでよし、後はパパが作ってくれたアプリを』
「させぬ! 手足の一、二本は……覚悟してもらうぞ!」
『わひゃっ!? もう、しつこいですね!』
画面をスライドさせ、モータルエンドのアプリを起動しようとするユウ。だが、そこにアストラルAが突っ込みタックルを仕掛けてきた。
二人もつれ合って部屋を転がり、またまた壁をブチ抜くハメに。今日はよく壁にぶつかる日だな、とユウは内心そんなことを考えていた。
『いたた……よくもやってくれましたね、もう許しません! 今度という今度こそは完全に倒してやります!』
「何度も言っている……それは不可能だ。私は不滅の高次元存在、アストラルA。お前はここで敗北の沼に沈むのだ!」
別室に転がり込んだ二人は、激しい戦いを繰り広げる。ユージーンとヴィトラが到着するまで、残された時間は多くない。
急ぎ決着をつけて脱出しなければ、また捕まり憑依実験をされてしまう。そうなる前に戦いを終わらせるべく、ユウは隙を突きマジンフォンを起動する。
『負けるのはお前の方です! 前は逃げられてしまいましたが、今回は逃がしません。ここでケリをつけますよ!』
【モータルエンド】
『! 身体の中から湧き上がってくる、この禍々しい力……。身震いしてしまいますね……』
「この気配……何かよくないものを使ったな? 一体、何をした」
『それはお前自身で確かめるといいですよ! そこから動かなければ簡単に確かめられるので大人しくしててください!』
マジンフォンの画面をスライドさせ、モータルエンドのアプリを起動する。直後、レボリューションブラッドとは違う禍々しい力がユウの体内を駆け巡った。
アストラルAは何かを悟り、警戒心を強める。そんな敵を葬るべく、ユウは全身に溢れる猛毒を操り攻撃を仕掛ける。
『食らいなさい、ナックルコンビネーション!』
「くっ、そんなもの……」
ユウは拳を振るい、怒濤の連撃を放つ。反撃しようとするアストラルAだが、ユウが空いた手に持つファルダードアサルトで予備動作を潰され何も出来ない。
ジャベリンを弾き飛ばされ、殴打の嵐に晒され……これまでの厄介さが嘘のように、パワーアップしたユウに完全に押されていた。
「何故だ……? 私が、ここまで一方的に押されているだと……!?」
『ボクは強くなったんです、精神世界で数千年分修行をしてね。お前やユージーンに二度と負けないように!』
「私は負けぬ。私はアストラルA、全てのパラディオンを凌駕する者……」
『残念でしたね、お前の全盛期はもうおしまいです! これでトドメです、イノセンスインパクト!』
「ぐ、オオオオオ……!!!」
連撃を食らって半壊したアストラルAに、トドメの一撃を放つユウ。肉体から切り離された魂に伝播する猛毒を乗せた拳が、アストラルAの身体を打ち砕いた。
「グ、ウガ……なんだ、この感覚は……。消える、私という存在が……この世から、完全……に……」
『これで終わりです、アストラルA。もうお前が猛威を振るうことはありません』
遠く離れた宇野のラボに保管されている、アストラルAの脳と魂が消滅し……ついに完全なる沈黙の時を迎えた。崩れ落ち動かなくなった相手を見ながら、ユウはそう口にするのだった。
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