インターネットポエム

水乃 素直

インターネットポエム

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。

 3分間で日記を書かなくてはいけないのだ。


 プールから出た私は、着替えを済ませ、併設された喫茶店に来た。

 椅子に座って、インターネットを見る。

 インターネットは今日も戦いに溢れている。

「我々は何も分かっちゃいない」

 本当に分かっていない。

 具体的な物語を抽象的に140字にまとめたって、何も分からない。

「昔、理科の実験で……いや、体験学習だったかな。液体の二酸化炭素を触ったことがあるんだ。ドライアイスと同じくらい冷たかった」

 ただ、液体から手を離すと、手には何も残らなかった。水滴すらつかなくて、元通り。

 インターネットはそれと同じだ。

 何かの感触と感情だけ残して、何も残らない。

 目の前のノートに言葉を書いている。今日1日の出来事を残していった。本当はこんなことしなくてもいいのだ。生きてるかどうかなんて、大きな話ではないから。



 3分が経過した。

 12時の鐘が鳴り、空に電撃が走った。最初は電撃エフェクトだったが、徐々にディスプレイにエラーが出るような、無機質で四角い光が走った。

 そう、この世界は、誰かによって作られた電脳世界。いや、電脳世界かどうかはわからないけど、おそらく誰かの意図があるプログラムの世界だ。

 俺はNPCなのか、プレイヤーなのか分からない。『外の世界』があるのかも知らない。

 また、世界はリセットされて、同じように俺は今日1日を過ごすのだ。



 時計を見ると、12時2分を指していた。

 金曜日の俺は学校にいて、ちょうど昼休みが始まる。何回も聞いた授業を受けて、放課後、俺は好きだった子に振られて、帰り道に着く。告白は本当に辛い。何回も「ループしてるんだから、行かなくてもいいのでは?」と思ったけれど、約束は木曜日にお願いしたから、こちらから破るわけにもいかなかった。


 俺はゆっくり席を立ち、後ろに座っている友人に向かって、

「なぁ、飯食おうぜ」

 と言いかけたところで--

 喫茶店にいることに気づいた。

 ん? んん?

 机の上を見ると、食べ終わったサンドイッチとコーヒーが置いてあるままだった。

 時計は12時5分を指していた。

 日付は、土曜日だった。

 何が起きてる?

 咄嗟に周りを見渡しても、店員も何も変わらず立っていて、客もおしゃべりを続けていた。


 ループから抜けた? それとも別のルートに入ったのか…?

 何も分からない俺は、とりあえずSNSを調べた。

 しかし、SNSには何もなかった。いつものように争いがある。なんでこれを見ているんだろうか。

 誰にも伝わらないかもしれないが……、と思いながら、

「え、ループしてない?」

 と呟いた。

 すぐさま通知が鳴った。

「フォローしてないけど、急にすみません! もしかして、あなたもループしてないですよね……?」

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