第12話 どこまで
「で、二人はどこまでイっているんだ?」
少し前を歩く小柄なキリトとその横を歩く大柄なレイルの背中を交互に見ながら、コルドールがサガンに聞いた。
「俺に聞かないで本人に聞いてくれ。」
サガンは顔をしかめて顔にかかる赤毛の前髪を掻き上げると答えた。
「恐れ多い。」
「今更だろう。」
サガンが言うとコルドールは豪快に声を上げて笑った。
サガンは王国内警備の第二騎士団、コルドールは王族などの周辺警護をする第一騎士団の所属だったが、折を見て行われる合同訓練で知り合うと、すぐに軽口をたたく仲になった。
訓練には鍛錬の為だと行ってレイル王子も度々参加していた。初めは遠回しにしていた周囲も、レイルが本格的に鍛錬に打ち込み、高い身分をかさに着ず周りに話しかける姿を見ると、次第に打ち解けたのだった。とは言え、レイルに気安くタメ口をきくのはサガンとコルドールくらいだったが。
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王都への旅も中盤に差し掛かっていた。サガン達は今後の旅程と警護について話し合っている。レイルは天幕の中に居るようだ。
キリトが一人食事の準備をしていると、コルドールの配下の男が一人やってきた。
今まで遠巻きにしていたのに珍しい、と思って見ていると、顔を赤らめながらジャンだと名乗った。
「キリト様は野草に詳しいのですね。皆、食事が美味しいと喜んでおります。」
「様だなんて。キリトって呼んでよジャン。」
と言って微笑みかけるとジャンは益々顔を赤くしながら、
「いえ、レイル様の…ですから。」
とボソボソと言ったが、よく聞き取れなかった。
「それで、あの、レイル様とはどこまで…」
としどろもどろと聞いた。
「ど、どこまでって…」
キリトは目を瞬かせると頬を染めて言葉を詰まらせた。
「そいつは俺も知りたいな。」
低い声に驚いて背後を見ると、話し合いを終えたらしいコルドールが立っていた。せっかくの金色の豪奢な巻き毛をガシガシと手で掻いて顔を顰めている。
「サガンに聞いてもケチって教えてくれないんだ。」
「ケチってなどいないさ。だが、デリカシーってものがあるだろう。見ろよ、可哀想にキリトがこんなに赤くなって。」
サガンが会話を聞きつけて言った。
「も、もうやめてー!」
キリトは真っ赤な顔をして、堪らなくなって叫んだ。皆の笑い声が辺りに響いた。
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