第11話 清流
一日のうちに慌ただしくあれこれ必要な物を調達して旅の荷物を準備すると、二日目の朝には王都に向けて出発となった。
キリト、レイル、サガン、そしてコルドールとその配下三名の総勢七名は、朝日を背中に浴びながらイズノールの街を出発した。
春の半ばながら日差しが強い。半日歩く頃には皆一様に額に汗を滲ませていた。
今歩いている街道は林に囲まれている。林の奥には川が流れているのが見えた。この辺りで昼休憩をしようということになって、一行は林に分け入って川の畔までやってきた。
透明な水が涼しげにサラサラと流れている。
キリトの育った家から半刻ほど歩いたところにも川があって、夏場は良く裸になって水浴びしたものだった。
日差しを受けながら長い距離を歩いて汗をかいてもいた。故郷の川が懐かしいような気分になってキリトは、
「僕、泳ぐ」
と言うや否や上着を脱ぎ出した。途端に陽の光の元に、白く透明な肌と控えめな胸の飾りが露わになる。ふと視線を感じて、サガン達の方を見ると、皆一斉にあらぬ方向を向いた。
「?」
下衣も脱ごうと腰紐に手をかけると、レイルが怒ったような顔をして声を掛けた。
「着替えならある。日焼けすると良くないだろう。」
レイルはキリトにフード付きの短い丈のマントを被せた。下衣を脱ぐのも日焼けするから駄目だと言う。
「そう?僕、肌はそんなに弱くないけど。」
怪訝な顔をしながらも清流の誘惑に勝てず、マントを羽織ったまま水に入った。
「あはは、冷たい!すごく気持ちいいよ。皆んなも入ろうよ。」
やれやれといった様子だったが、やはり清流は魅力的だったようで、レイルもサガンもコルドール達も、交互に見張りを立てて清流に手足を浸したのだった。
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