第2章〜Everything Everyone All At Once〜⑬
「いくつか確認したいことがあるんだが……」
放課後の時間でも、まだ養護担当の教諭が残っていた保健室で
「キルシュブリーテと屋上にいた時の
オレの疑問に、ブルームが答える。
「えぇ……さっきも言ったみたいにキルシュブリーテが行った
「そうか……それを聞いて少し安心したが……キルシュブリーテをはじめとした『ラディカル』のメンバーやアンタ達のセカイの人間は、誰でも、その『疑似催眠』とか言う怪しげな術を使えるのか?」
「いいえ……疑似催眠を行うには、脳波に干渉する特殊な
なるほど……。
そのデバイスが、どんな風に人体に作用するのかは詳しくわからないが、副作用が後遺症がないとは言え、そんな恐ろしい機器を平然と使うとは、やはり、『ラディカル』のメンバーは油断ならない連中のようだ。
罪悪感に
「次に、キルシュブリーテが、オレに対して語ったことについてなんだが……オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの
「その質問には、ボクが答えさせてもらうよ」
慎重に問いかけたオレの疑問に対して、ブルームを制し、ゲルブが回答者として名乗りをあげた。
「
「そうか……それじゃ、キルシュブリーテが話していた、オレが、ここの屋上から飛び降りたセカイの
「不幸中の幸いと言っていいのか、一命は取り留めたみたいだけど、そのセカイのキミは、病院で長期療養中だよ」
――――――やはり、そうだったのか。
オレはこれまで、自らの行動が、並行するセカイの自分に危害を及ぼすという可能性をまったく考慮できていなかった。
自分自身の軽率な行動が、
すでに身の危険にさらされた
そして、彼らに、再びたずねる。
「オレは……アンタ達のセカイの法律で裁かれる対象になったりするのか?」
別のセカイの……とりわけ、並行世界へのトリップを行うことが政府公認で認知されているセカイでの法体系が、どうなっているかはわからないが―――――ー。
自分は、ブルームやゲルブのセカイの住人ではないとは言え、もしも、そのセカイにおいて何らかの罪に問われるのであれば、周囲の人間や別セカイの自分に対して、身体的・精神的に害を及ぼしてしまったオレ自身にできることは、彼ら捜査官の身を委ね、法律に従って罪をつぐなうしかない。
そんな想いで、捜査官を名乗るふたりに、自分が関わった行為に対する法的な罰則についてたずねたのだが、彼らの答えは、オレの予想とは異なるものだった。
「キミの心配とは関係なく、今のところ、ボクらが把握している事実からは、キミが法的に問われることはない」
ゲルブの返答に、オレは驚き、
「どういうことだ?」
と、質問をくり返す。
「ボクらのセカイでは、並行世界に関する認識が一般人にも浸透しているけど、キミのように、
ゲルブに続いて、ブルームが言葉を付け加えた。
「つまりは、あなた自身が、私たちのセカイにとって、イレギュラーな存在だから、法整備も対応が追いついていないのよ」
彼らの答えに、オレは、「そう、なのか……」と気の抜けた返答をするより他はなかった。
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