第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑦
いくつかのセカイを観察しながら、さまざまな条件を吟味して、
二学期になって文化祭の準備が始まり、放送・新聞部の活動の一環として、そのイベントの出演者に取材という名目で会話をする時間が増えたことは、オレにとって幸運だった。
すると、これまで、やり取りの少なかった
そのことを嬉しく感じながら、また、
「気になってる女子に気持ちを伝えようと思うんだけど、どうすればイイかな?」
そうたずねるオレに、恋バナが大好きなミツバ(自分がアプローチしている対象とは異なるので、便宜上、アドバイスをくれる彼女を頭の中で表記を区別することにした)は、「良くぞ、聞いてくれた!」と、言わんばかりのキラキラした表情で、楽しそうに答える。
「相手の女の子がどんなヒトかはわからないけど……わたしから
「それって、モノを売るセールスマンが、商品の魅力を説明する前に契約を迫るような、気持ちの押し売りは止めておけってことか?」
「そうそう! 飲み込みが早いじゃない? 告白を成功させるコツはね……『上手に好きバレさせながら相手に意識させる』ことだよ」
「そっか……告白する前に『このヒト、自分のことが好きなのかな?』って思わせておくのがイイってことなんだな?」
「そのとおり!
目の前の彼女 = ミツバが、オレのことを異性としてまったく意識していないようにアドバイスをしてくれたことに対して、少し複雑な想いもあったが、別のセカイで、恋愛アドバイスの動画を配信していた彼女と恋愛観を共有して貫いていることは、オレを安心させた。
同時に、彼女たち = ミツバのアドバイスを参考にしたオレは、その助言の正確性を確認するため、正反対のアプローチも試すことにした。
それが、文化祭の日に行われた校舎屋上での『青少年の主張』のイベントで行った告白だ。
ご近所のセカイのミツバたちが言うように、愛の告白が、『二人の関係性の確認作業であって、一発逆転や急速接近を狙うモノではない』だとすれば、中庭で屋上を見上げる
そして、彼女は、オレの思惑どおりの言葉を口にした……。
「やっぱり、雄司とは、
ただ、「センパイ……」と、屋上に設置された舞台の背後から声をかけてきて、
「せっかく、がんばって気持ちを伝えたのに……」
と、自分のことのように悲しげに語る後輩女子の姿には、心を動かされたのだが……。
(モモ……チートみたいなことをしてゴメンな)
別のセカイでは、同居人にもなっている彼女に心のなかで詫びたオレは、『セカイ・システム』にアクセスして、ブックマークを付けた『ルートA・
オレにとっては、世界一優秀な恋愛アドバイザーであるミツバが、別のセカイで配信している動画で、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――――――ミツバちゃんの考える理想の告白のシチュエーションを教えて!
「やっぱり、まだ、高校生だし……『夕陽の見える教室で、二人きり……なにも起きないはずがなく……』って、シチュに憧れるよね! キャ〜〜〜〜〜」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と、主張していたのを参考にさせてもらった。
他にも、ミツバたちのアドバイスに従い、
そして――――――。
文化祭が終わったあとの教室で自分の想いを告げたオレは、思惑どおり、
「ようやく言ってくれた……もう、さんざん
幸せそうな笑みを浮かべながら釘を差してくる彼女に苦笑していると、
「中学生になった頃から、距離を置かれてるのかな、って思ってたのに……ねぇ、二学期になってから、急に親しく話しかけてくるようになったのはどうして? ようやく、わたしの魅力に気付いたとか?」
冗談めかした口調ながら、鋭い指摘をする彼女の言葉に応える。
「あぁ、的確でタメになる恋愛のアドバイスをしてくれるヒトと知り合ってな……そのヒトに、『ホントにその女の子のことが好きなんだね。がんばって、アプローチしてみて! 応援してるよ』って言ってもらえたからな」
「こんなに、的確なアドバイスができるなんて、優秀なヒトんだね? でも、
そんな嫉妬深い彼女に苦笑の度合いを深めながら、オレは、「それは、ちょっと難しいかもな……」と答えつつ、並行世界のミツバたちに心から感謝し、後日、配信を行っているセカイの彼女の動画に、こうコメントしておいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ミツバちゃんのアドバイスのおかげで、片想いしていた女子と付き合うことができました!
『クローバー・フィールド』超最高!
by 女子に縁のなかった非モテ男子
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます