第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑥
ルートA・
当時の自分たちは小学生だったので、あまり認識はしてなかったのだが、
動画投稿サイトにアップした歌唱動画がバズりまくり、現役高校生シンガーとしてだけでなく、同世代のインフルエンサーとして多くの企業案件を抱える有名人になってしまった今の彼女からは想像もできないが、オレと出会った頃の
それは、転校してきたばかりの慣れない環境ゆえかも知れないし、両親の別居という精神的ショックがあったからかも知れないが、引っ込み思案な性格の彼女に、色々なことにチャレンジして見るよう提案したのは、オレだった。
オレの自宅の二軒となりに引っ越してきた
彼女の持つ歌声でなく、努力を惜しまない向上心や、それを表には見せずに振る舞う性格に惹かれていることを自覚したのは、思春期になってからだ。
ただ、同時に小学生の頃は、同じような立ち場だった彼女が、今ではすっかり見違えるような存在になってしまったことに、オレは、どこかで鬱屈した想いを抱えるようになった。
「いまさら、自分なんて相手にされないだろう……」というあきらめと、「それでも、
そして、『セカイ・システム』で、ご近所のセカイを渡り歩くうちに、
「いま、自分が暮らしているセカイでは難しくても、他のセカイなら、もしかしたら――――――」
そんな想いに至るまで、大して時間は掛からなかった。
その頃から、オレは、他の
いくつかのセカイでは、インフルエンサーとなった
たとえば、別のセカイの彼女は、自身の動画配信用チャンネル『クローバー・フィールド』で、こんな恋愛アドバイスを配信していた。
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「それでは、『彼氏にしたい男子の特徴』を発表していきたいと思います! 拍手〜」
――――――たくさんのメッセージ、ありがとうございました。
「今回は、たくさんいただいたご意見の中から、厳選したモノを発表します! その中でもというわけで、さっそく、《ミンスタグラム》のアカウントに届いたメッセージを紹介していきましょう!」
――――――「一緒にいると楽しいね」と言ってくれる男子
「わかる! これ、重要なポイントだよね〜。この言葉は、男女ともに言われて嬉しい言葉だと思うな〜。それに、付き合ってからも、そうだし、なんなら、気になる相手とお付き合いする前にも有効なフレーズだから、この動画を見てる男子は、注目!」
――――――このちゃんねる、男性の視聴者は、少ないと思うけど……(笑)
「男子の視聴者が少ない? だ・か・ら・こ・そ、ここで、他の人たちと差がつけられるってものじゃない?」
――――――じゃあ、男子は、実際、どんなシチュエーションで、このフレーズを使えばいいのかな?
「これは、もう実際に二人で会う前から勝負は始まってるの!」
――――――勝負…………ってナニ(笑)?
「いや、『勝負って、なんだ?』って感じだけど、相手を自分の虜にするための駆け引きは、一緒に会う前でもできることがあるから……」
――――――たとえば?
「たとえば、他の人たちが一緒でも、二人きりで出かける時でも良いけど、出かける前に必ず相手に、『今日は楽しみだね』って、LANEのメッセージを送っておくの」
――――――実際に会ってからは?
「実際に一緒にいる時は……二人が付き合う直前とかの雰囲気なら、会話が盛り上がった直後に、『あ〜、やっぱり、キミと話すの楽しいな〜』って、ポツリと言葉を漏らすとかね。こんな風に言われたら、『えっ、そんなに楽しいって思ってくれてるの? それって……もうわたしのこと好きじゃん……』ってなるよね? ね?」
――――――他には、どんなシチュエーションで使うの?
「あとは、二人で出かけたあと、家に帰ってから、『今日は楽しかった。ありがとう』ってメッセージを送ること。二人で会う前、会ってる最中、帰って来たあと……最低この三回、『キミといると楽しい』ってことをカタチにするだけで、相手からの好感度が上がる魔法の言葉だと思ってくれてイイ!」
――――――なんだか、あざとい系女子の手口みたいだね(笑)?
「こんな風に説明すると、あざとい女子みたいな方法だな……って思うかも知れないけど、これは、相手への気遣いの範疇だからね! 男子は、そういうことデキないヒトが多すぎ!」
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自分のように、多くの女子と気軽に話せないような人種には、こうした会話やメッセージアプリのやり取りをすることすら、ハードルが高い気がするのだが……。
それでも、チェックマークを付けている自分が暮らす《
そう考えたオレは、二学期が始まってから、そのアドバイスに従い、
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