第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑤
その日から、色々なセカイを巡るオレの旅が始まった。
後頭部を二度なでれば、目の前には、宇宙空間から俯瞰するような感覚で、オレたちが住む美しい
『セカイ・システム』と勝手に名付けたスクリーンの巨大な惑星を
動画サイトで好みの映像を選択するように訪問する
チェックマークを付けたままにしている、(オレ自身の認識では)本来のセカイである惑星から少し離れた位置に、自分たちの住むセカイより、美しく見える
そのセカイは、自分たちの
(アジア大陸が美しく見えたのは、人口の急激な減少と人間の社会活動が極端に減ったので、大気汚染が発生しなかったためらしい)
また、チェックマークから右側や左側に大きく離れると、いくつかの
先の大戦で勝利を収めた自分たちの国は、ドイツとともに、アメリカ大陸を東西分割して支配しているという。そのセカイでの歴史や政治経済の教科書によれば、日本語も世界中で、なかば公用語として利用されているとのことだ。
いっぽう、自分たちの国が徹底抗戦をセカイでは、逆に日本列島が、連合国に分割統治され、北海道や東北地方は、ソビエトという世界史の教科書でしか目にしたことのない国が支配する地域となっていた。
さらに、アメリカとソビエトによる対立の激化で核戦争が起こり、人類の大半が死滅しているという恐ろしいセカイもあり、その
どのセカイにおいても、自宅が、元のセカイと同じ場所にあるとは限らないため、自分のセカイとかけ離れた社会や政治体制になっている
ただ、それでも、生まれてから十七年もの間、住み慣れたセカイがある身としては、自分たちの住む
やはり、自分が住みやすいと感じるセカイは、民主主義を継続している自分たちの国なのだろう。
そして、数えきれないほど多くの
(ニキシー管に数値が表示され、自分のセカイとの乖離具合を計測できる機器があれば便利なのだが、残念ながら、このセカイは、オレの好きなゲームやアニメのようにはいかないらしい)
また、時間軸については、どの
つまり、自分のセカイの8月1日は、同じ年の同じ日、同じ時刻なのだ。
そのことが理解できてからは、オレが、『デフォルトのセカイ』と名付けた自分たちの
(感染症が、まん延しているセカイが、自分たちの
チェックマーク付きの『デフォルトのセカイ』近辺では、小学生以来の付き合いである、
夏休み中に行った綿密な調査で、そうしたことが判明してから、
結局のところ、生まれ故郷でもあり、幼稚園・保育園から小・中・高校、そして、大学まで設立され、島内で高等教育を授かることのできる、住み慣れた環境の人工島で、顔なじみのメンバーと過ごすことが、自分の性格には合っているようだ。
そして、夏休みが明け、本格的に学業生活が再スタートする頃から、『セカイ・システム』のサムネイル画面で、お気に入りの
最初は、夏休み初期に《
学校の部活動では、
「お兄ちゃ……じゃなくて、なんですか、センパイ? あんまり、ワタシにまとわりつかないでくれますか? 鬱陶しい……」
と、取り付くシマもない態度を取ることの多い彼女ではあるが、休日など、少し帰宅が遅くなったときは、
「も〜! お兄ちゃん、帰ってくるの遅いよ〜! つかささんと一緒にご飯つくって待ってたんだから〜。はやく一緒に食べよ?」
と、笑顔で出迎えてくれる。
中学生のときに知り合って以来、彼女とは、四〜五年ほどの付き合いになるが、
平行世界で、周囲の人間の意外な側面を見ることが出来るという発見は新鮮であり、オレの中に密かな願望が芽生えるまで、さほど時間は掛からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます