だって好きな人が出来たから

磨白

だって好きな人が出来たから

私って、友達は少なくて、先輩とかは特に怖いから。


だから別に、卒業式だからって寂しいなって感じたことはありませんでした。実際、高校1年生のときは何も感じなかったの。


でも今は違う、すごく寂しい。だって先輩に私の好きな人が出来たから!!!


























「由美〜、ご飯よ。早く降りてきなさい〜!」


「はーい!待ってて!!!!」


私は急いで布団をたたんで、リビングまで降りる。あんまり遅いと怒られるからね!


「おはようママ」


「おはよう。今日は珍しく目覚めがいいのね」


「うん、今日は卒業式だからね」


「そうね、1年生のときはこの日お休みだったのに大変だわ……」


「なんでママが?」


「なんでって、早起きしてご飯作らないといけないでしょ?」


ママ、それはこんな無駄に凝った朝食作ってるからだよ……


私は、並べられた朝食をみてため息を吐く。フレンチトーストにウインナー、ブロッコリーサラダ、コーンスープと更にヨーグルト、フルーツ盛り合わせ…


「って、多いわ!!!こんなには無理!!」


「何を言ってるの。私が栄養バランス考えて作ってるのよ?」


「別の要因で体調悪くなる!お腹痛くなったりでもしたら困るんだから!」


私は部屋に逃げ込んで、学校の準備を始めることにした。




























「ちょっと、由美!!!!!」


私が呼びかけても由美はスタスタと部屋に向かって行ってしまった。


「最近ご飯全然食べないのよね、大丈夫かしら」


ほとんど手のつけられていないお皿を見てため息を吐く。


「それにしても由美、部活も行ってないのに先輩に友達とかいるのかしら?」


いつもより妙に張り切っていた由美を少し不思議に思いながら朝食の片付けに移った。





























「もうお母さんったら、朝からあんなに食べたら太っちゃうよ」


今日は先輩に告白する特別な日なんだから、食べ過ぎでお腹が出てたりしてたら最悪です。むしろお腹空いてるくらいで丁度いいでしょ!


「さてさて、どうしようかな。可愛くして行きたいけど……うーん、少しくらいならメイクしてもバレないよね!」


私はできるだけ自然に可愛く見えるようにメイクしていく。


「駄目!こんなんじゃ絶対振り向いてくれない!もっと、もっとちゃんと可愛くしないと……」


と、何回もメイクをやり直しているうちにどんどん時間が無くなっていき……


「ヤバ、もうこんな時間!納得いってないけど、しょうがない!」


えぇっと荷物は、あった!!!!あ、一応コレも入れとかないと念のためだけどね。


「お母さん行ってきます!!!!!」


「ちょっと、そんなに急いで大丈夫?気をつけなさいよ〜!」


後ろからお母さんの声を受けながら家を飛び出した。


「っと鍵、鍵!」


急いでても忘れない私ってば偉い!


自転車に跨って、急いで学校に向かうことにした。


























意外と早くついちゃった、急いで来すぎたかな……


「あれ、由美。いつもはギリギリなのに今日は早いじゃん」


「そうでしょ?ちょっと張り切っちゃって」


「こういう行事、面倒くさいって言うタイプじゃなかったっけ?」


「うん、そうなんだけどね。今回はちょっと違って……」


「どうかしたの?何、告白でもするの???」


「……」


「え、マジ????」


私は自分の顔を覆って、小さく笑った。


「うぇえええええ!?あの由美が!?これは号外、号外だよ!!!」


「ちょっと、声大きい声大きいってば!」


周囲の目線が一気にこっちに向く、この量の視線はしんどいって。


「あ、ごめんごめん。ちょっとびっくりしすぎた」


「ちょっと失礼な気もするけど、許してあげよう」


「でも、あれ?由美って仲良い先輩居たっけ?」


「んー、あんまり学校では話さないかな。一緒に帰ったりはするけど」


「そうなんだ……え〜まさかそこまで進んでたとは……。ちなみにどなたか伺っても?」


……ちょっと恥ずかしいけど、告白したらどうせ知られるだろうし、今言っても変わらないか。


「前条先輩だよ、あのほらテニス部の」


「あー!えっ、結構有名人じゃん!!!凄いね!でもあの人結構遅くまで練習してない?」


「うん、だから学校で待ってるの。良い女でしょ?」


「そうだね、献身的っていうか。好きな人のためにそこまでできるのは……何か素敵だね」


「えへへ、ありがと」


キーンコーンカーンコーン♪


「はーい、朝の会始めるぞ〜。席つけ〜」


「あっ、ヤバ。また後でね由美!」


「うん、また後で」
































今まで由美から男の気配なんて感じたことなかったけど、結構やるなぁ。


私も彼氏ほしいな、先輩に告白してみようかな。なんちゃって。


あれ、でも由美結構私と一緒に帰ってるけど、いつ前条先輩と帰ってるんだろう?


「あ、私は部活してるし。その時か」


先生の話はほぼ耳に入らず、私は親友の恋愛事情について頭を回しているのだった。

























「今から、第35回卒業式を始めます。全員起立!!!」


始まった。先輩たちが入場している間ずっと拍手してたから手が痛い……


在校生挨拶や、校長先生の言葉などがあって、次に卒業証書授与が行われた。


「3年7組 前条 廉田」


「はい!!!」


はぁ、やっぱ先輩はかっこいいな……これから学校で見れなくなると思うと、少し寂しい……ううん、大丈夫。今日告白するし、これからは他のところでも会えるよね?


校歌斉唱が始まり、生徒全員の声が体育館に響く。ピアノの先輩が泣いちゃって、途中で演奏が止まったりはしたけど、良い卒業式になったと思う。


「卒業生退場」


1組から順番に先輩が退場していく。


前条先輩が横を通ったとき、私は勇気を出して手を振った。


少し驚いたような顔をしていたけど、先輩は手を振り返してくれた。


学校ではあんまり会わないようにしてるから申し訳なかったけど。ま、卒業式だし良いよね。

























2年生は卒業式が終わったあと、すぐに解散となった。


私は卒業生のホームルームが終わるまで、待つことにした。勿論告白のためである。


親友から「頑張れよ!!」と激励の言葉をもらい、前条先輩の靴箱に「体育館裏に来て下さい」という手紙を入れた。あとは来るのを待つだけ。


……ちょっとドキドキしてきたな。
























「君が手紙入れてくれた子?」


後ろから声がかかる。私の大好きな先輩の声。


「ま、前条先輩!!!わ、私と付き合って下さい!!!!」


気がついたら口から出ていた。この思いはもう、抑えられなかった。


先輩は……
















































「え?」


面を食らったような顔をしていた。


「えっと、君は誰かな?」


私は頭の中が真っ白になった。


























俺は今知らない女の子に告白されていた。


多分、後輩だろう。同級生ならなら今日は胸に花のブローチをつけているはずだから。


俺の言葉を聞いて後輩の子は立ち尽くしていた。……流石に酷かったかな。びっくりしたとはいえ、あの言い方は良くなかった。


「ごめん、もしかしたらどこかで会ったことあるのかもしれないけど、記憶になくて。2年生、だよね?」


返答がない。大丈夫かな、傷つけてしまっただろうか。


「……一緒に家に帰ったじゃないですか」


「え?」


2度目の衝撃だった。俺は女の子と一緒に家に帰ったことなんて……あっ。


そこで思い浮かんだ可能性。俺が普段から感じていた違和感。。もしかして、もしかしてお前は……





























ドスン


腹部への鈍い衝撃。そして、後から走る鋭い痛み。


。理解するのに若干の時間がかかった。


「私は、私は、ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、あなたを、見ていたのに!!!!!!!愛していたのに」


ナイフがまた俺に迫る、また俺に突き刺さる。何度も何度も何度も。


血を吐く、頭がぼーっとする。痛みが薄れていく。あー、人って意外と簡単に死なないんだな。


「最悪だ、やっとこれから……」


ドスン


心臓へと深くナイフが刺さる。


ストーカーの顔が目に入る。


彼女は泣いていた。





























「しょうがないよね、だって受け入れてくれなかったんだもん」


最初からこうしようと思っていたわけではないけど、私のものにならなかったときのために頭の中では考えていた。


こうなっても良いように準備はしていた。


先輩の手を取る。


「やっと、手を繋げましたね」


私は先輩をバラバラに解体した。


「これでずっと一緒に居られますね」


何も入っていないバックに先輩を入るだけ詰め込んで、私は幸福感から微笑んだ。

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