第一夜 4 ノア、戦ってないけど勝利する
ガシン! ガシン!
凶器を携えたロボットは一歩、二歩と、人間と同じように関節を動かし、下肢を強く踏み込んでこちらに迫ってくる。
感情がない機械、にもかかわらず殺意を感じてしまうのがまた恐ろしい。
このままだと、まずい。
背を向けるのは危険かもしれないが……とにかく逃げるしかない。
警戒しつつも後方へ一歩踏み出そうとしたその直後だった。
ガシン! ガシン! ……ガシャガシャガシャ!!
「……ん? ……あれ」
プシュウゥゥウゥゥゥゥ……
ロボットはこちらに襲いかかってくるのかと思いきや、突然、崩れ落ちるように再び膝をつき、煙を上げだした。
サイレンの音も弱々しくフェードアウトしていく。
よく見ると、その崩れた足の関節部分などは所々、折れたりヒビが入ったりしている箇所がある。
地面に叩きつけた傘がぐにゃりと曲がるように、軽金属が強い負荷を受けて耐えきれずに……って、今さっき空から落ちてきた時の激しい着地のせいじゃないか。
「えぇ……」
完全に自分の理解を置き去りにした、よくわからない展開に困惑するしかなかった。
まぁ理解が追いついてないのは、自宅を出てからずっとなのだけど。
とりあえず、何もしてないのに自壊しちゃったこいつ、どうすればいいんだ、これ。
呆然と、崩れて動かなくなった金属の塊を眺めていた、その時だった。
その後方に広がる夜闇の中、遠いところで何かが発光しているのが見えた。
続いて、スタタタタタタ……と、何かが地を駆けるような音も聞こえてくる。
先ほどロボットが落ちてきた時のような轟音とは違いとても小さな音量だが、サイレンが鳴り止んだことにより再び静寂に包まれた中では、十分に聞き取ることのできるものだった。
今度はなんだ……?
光と足音は瞬く間に大きくなり、高速で接近してきているのがわかる。
目を細めて、光の正体を探る。
闇の先から、不自然な緑色に輝く光を全身に纏った女性が、物凄い速さの駆け足でこちらに接近しようとしている姿が確認できた。
人間!ようやく他の人に出会えた!
……けど、絶対また変なやつだ!
理解、早く追いついてくれ!
そう願った。
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