プロローグ 男子高校生は退屈な1日を過ごす
京都には24の季節がある、とか言われている。
どのように変化するのか、いつからそう言われているのか、誰が言い出したのか、発祥は本当に京都なのか。
ここに雑学知識豊富な人か、何でもスマホで調べることが好きな人がいればすぐに答えが返ってくるのだろうけど、自分はそれを知らないし調べたこともない。
ただ、個人的に思うことがある。
昔この京都で暮らしていた人たちは退屈だったのだろうな、と。
やるべき仕事も、娯楽も少ない、特に変わり映えのない日々をどうにか楽しもうと、1年を24等分することで、少しでもその変化を楽しもうとしていたのだろう。
素晴らしいことだとは思う。季節に限らず、京都人がそうやって一千年を超える昔から人々を退屈にさせないように文化を育んできたからこそ、今の京都があるのだ。
しかし現代、京都に限らず日本中で暮らす人たちは、どうなのだろう。
みんな勉強・仕事と忙しく日々を送っている。そして、そのストレスを発散する娯楽も多種多様に溢れている。
退屈そのものを楽しむ、そんな余裕なんてないのだろう。
時間の余裕も、心の余裕も。
それが良いことかどうかも、わからないのだけど。
5月、大型連休が空けたばかりの水曜日。
【二十四節気】に従えばこの時期は【立夏】と呼ぶらしい。
その単語を意識する人は、どれほどいるのだろう。
こんなことを考えている自分だって、特に何も意識していない。
今日も、世間的にも自分的にも特に大きなニュースの無かった、普通の一日だ。
それでも世界は目紛しく変化し続けているはずだけど、その違いが自分の瞳に映ることはあまり多くない。
昨日と今日が違うことはわかっていても、その違いが何なのか、わからない。
ここ京都はいつも通りに住民が暮らし、いつも通りに観光客で賑わう。
この観光都市を行き交う人達も、当たり前だけど、一人一人は別人だ。
でも、そんな違いだって、知り合い、あるいは有名人でもない限り、わからない。
自分だって例外じゃない。そこに紛れていれば、どこにでもいる学生だ。
ほどほどに勉強し、ほどほどに運動し、ほどほどに多趣味だが熱を入れるようなものは特に無く、生活スタイルもごく一般的。
今日もいつも通り登校し、勉強し、クラスメイトと談笑するなどのごく一般的なスクールライフを過ごし、帰宅し、食事をとり、少しのんびりする。それから、22時半という今時の高校生にしては比較的健康的な時間にベッドに入る。
いつもと変わらない、そんな一日だった。ただそれだけの、いつも通りの一日だった。
昨日との違いなんて、他人との違いなんて、あまりよくわからない。
翌朝に目が覚めると、今日と同じ明日が来るのだと思って、眠りに落ちる。
しかし、突如訪れたこの夜を境に、同じ明日を迎えることはなくなった。
この夜、不思議な世界に迷いこんでしまったこと。
そこで、一人の美しい魔女と出会ってしまったこと。
これが全ての始まりだった。
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