第12話 異文化をつなぐ一皿
時ちゃんは、いつものように店に立ち、心を込めてめざしを焼いていた。その日も、店内は常連客で賑わい、いつものように温かい雰囲気が漂っていた。そんな和やかな空気の中、ドアが開き、ひとりの留学生と思しきイギリス人の女性が入ってきた。彼女の名前はミッシェル。日本に来たばかりで、日本語はほとんど話せない様子だった。
ミッシェルはメニューを見つめながらも、何を注文していいか分からず、困惑している様子。時ちゃんは彼女の前に立ち、どう対応すべきか戸惑っていた。その時、常連客の一人が英語でミッシェルに話しかけ、注文を手伝ってくれた。
彼は時ちゃんに向かって、「彼女はイギリスからの留学生で、日本の食文化に興味があるんだって。でも、めざしは初めて見るらしいよ」と説明した。時ちゃんは、ミッシェルに特別な対応をしようと決め、彼女にめざしの定食を提供することにした。
ミッシェルは、時ちゃんが丁寧に焼き上げためざしを目の前にして、興奮と好奇心で目を輝かせた。彼女は、常連客の手助けを借りて、「美味しい」という言葉を英語で伝えた。時ちゃんは、少し照れくさい笑顔を見せながら、うなずいた。
食事が終わった後、ミッシェルは、この経験をSNSでシェアし、日本の地元の食文化の魅力を世界に発信した。彼女の投稿はたちまち多くの人々に共感され、話題になった。
この日の出来事は、時ちゃんにとって新たな気づきを与えた。彼女の作る料理が、言葉の壁を超え、異文化をつなぐ架け橋になり得ることを実感したのだ。また、常連客との間にも、新しい絆が生まれた。
ミッシェルの訪問以降、「時ちゃんの、めざし道!」には、さらに多くの異国の人々が訪れるようになった。時ちゃんの店は、小さな地域から世界に向けて、日本の食文化を発信する場所となり、時ちゃん自身も、異文化交流の大切さを改めて感じることになった。
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