第5話 天狗の銀

僕は神社の裏側のいつもの場所に着くと、大きく深呼吸してから銀ちゃんの名前を呼ぶ。呼ぶとすぐに、銀ちゃんは来てくれた。

僕はぎゅっと銀ちゃんに抱きついて、あこがれの眼差しで見上げた。


「…どうかしたか?」

「銀ちゃんって…銀ちゃんって神様だったんだね!」

「はぁっ?どこからそんな話が出て来たんだ…?」


銀ちゃんは眉毛を動かして、困った顔で僕を見た。


「おばあちゃんが…。あの…ごめんね、おばあちゃんにバレちゃった。でも、おばあちゃんは誰にも言わないし、銀ちゃんのこと、良い子だって言ってたよ」

「ああ、凛の祖母か…。凛の祖母も、良い人だな。ちゃんと凛と遊ぶ許可をもらったぞ。…で、その祖母が、俺を神様だと言ったんだな?」

「うん。山を護ってるって」


僕の前髪を横に流すように撫でて、銀ちゃんは優しく微笑んだ。


「神様ではないけど、山を護ってるのは本当だ。もちろん、凛のことも守る。だから空を飛ぶ翼があるし、人間にはない不思議な力もある。凛…、おまえは最初から俺に懐いてくれていたが、俺が怖くはなかったのか?」

「え?全然怖くないよ?だって大好きだもんっ。それに銀ちゃんはかっこいい!」

「ふっ、そうか。なら、これからも仲良くしてくれるか?」

「うんっ」


僕は嬉しくて、力強く頷くと、飛ぶために僕を抱き上げた銀ちゃんの頬にちゅうをした。

そんな僕を、銀ちゃんは少し赤い顔をして、優しく見つめていた。



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