第4話 優しい時間

「泣かんでもええよ、大丈夫や。おばあちゃんは誰にも言わへん。凛が帰った後にな、男の子がうちに気付いて話しかけて来たんや。礼儀正しいしっかりした子やった。『いつも凛を勝手に連れ回して申し訳ない。凛に黙ってるように言ったのは自分だから、凛を怒らないでやって欲しい。それと図々しい申し出だが、自分の正体は誰にも言わないでもらえるとありがたい。その上で、凛と会う事を許してもらえないだろうか』言うて、深々と頭を下げたんや。天狗言うたら、気位の高い、偉そうなものや思ってたけど、あの子は品のある優しいええ子やな。そやから今までと変わらずに、遊びに行ったらええよ。あの子は強そうやし安心やろ」


そう言って笑うと、僕を抱きしめてくれた。おばあちゃんの暖かさに、僕はほっとしてやっと涙が止まる。


「銀ちゃんと遊んでもいいの?銀ちゃんはね、凛にいろんな物を見せてくれるし、すごく優しいんだよ。おばあちゃんも大好きだけど、銀ちゃんも大好きなの…」

「うんうん、わかってる。おばあちゃんも凛が大好きやで。大好きな凛が悲しむ顔は見たないからな」

「おばあちゃん…ありがと。あ、ねぇ、さっき言ってた天狗ってなに?」


おばあちゃんが目を丸くして、僕を見つめた。


「あんた、あんな派手な翼を見とって、あの子が何者か何も思わんかったんか?まあ凛は純粋やからな…。ただ綺麗としか思わんかったんやろな。天狗はな、この辺りの山をまもってる、まあ神様みたいなもんや。ここだけやなく日本のいろんな所におる。銀ちゃんとやらは、この辺に住む天狗の一族の子やろなぁ。廉と変わらんぐらいの年やろうに、しっかりしとったわ」


おばあちゃんが銀ちゃんを褒めてくれるのが嬉しくて、僕は自然と笑顔になる。

それに、おばあちゃんの話だと、銀ちゃんは神様だったんだ!そんなすごい人と友達だなんて、僕は飛び上がりたいくらいに嬉しかった。


「ほな凛、早よ遊びに行っておいで。銀ちゃんが待ってるんやろ?」


おばあちゃんが僕を立たせて、もう一度、綺麗に顔を拭いてくれた。

僕は靴を履くと、おばあちゃんに「じゃあ、行ってきまーす!」と元気よく挨拶をして、足取り軽く駆けて行った。


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