第七話 念話スキルを試してみる
風邪から回復して数日後オレはぼんやりと考えていた。
チュートリアルはたぶん順調にこなせているんじゃないかとは思う。でも問題は2歳の死亡フラグを回避できる目途が全く立たないことだ。
母とライラの会話を聞いていた様子からすると、母は箱入りのお嬢様で相当の世間知らず。三女という事でもあるからいわゆる貴族同士の
次のチュートリアルは『チュートリアル:この世界の神と会話しよう!報酬はその神から直接受け取ってください。※1歳になったら洗礼式があるからその時にお話ししてみてね!byロキ』
神との会話!
そういえば転生の時にロキが『この世界の神に話を通しておく』みたいなことを言っていた気がする。まぁロキの存在を知っていれば今更神の実在について疑う余地はない。あの世界にいればこの世界にだっているだろう。
とにかく現在のオレは生後だいたい3か月半くらいか?約8か月ほど時間ができたことになる。
その間にできることを進めなきゃいけない。いけないんだけど自分、赤ちゃんですから……
今できることは、魔法・魔力関連のスキルの鍛錬と……念話スキルだ。
そうだ、念話スキルでライラを味方につけよう。母はたぶんあまり頼りにできない。ライラならある程度の事情は知っているだろうし、2歳までの1年と8か月あれば様々な対策は立てられるだろう。
でも、どうやってライラと交渉をする?
念話で意思疎通ができたとして『オレは前世の記憶を持っている。生き延びるために力を貸してくれ!』なんていきなり言っても気味悪がられるのが関の山だろう。
……そうだな、まずは念話スキルを試して反応を探ってみるか。
赤ん坊であっても持っている自然な欲求を伝えて様子を見よう。ちょうどお腹が空いたことだし。
「あうぅ」(おなかすいた~)
……どうだ?
「あうあ~」(おなかすいたよ~)
「あら!メグちゃんお腹空いたのね~、自分で言えて偉いわね~」
「ア、アン様!?今、マーガレット様がおしゃべりになりませんでしたか!?」
「まぁ!メグちゃんお喋りできるようになったのかしら?」
母の問いに、オレはもう一度念話を併用して「あぅ~」(おなかすいた~)と答えた。
「やっぱりお喋りできるのね~」
「いえいえいえいえ!アン様、マーガレット様は念話スキルをご使用です!」
念話スキル自体は知られているらしい。よかった……これで話を進められるかもしれない。
「このことは絶対に公爵家に知られるわけにはいけません!」
「そうなの?赤ちゃんとお話できるなんてすごいことだと思うけど……」
「凄すぎるのです!念話スキル保持者は大変希少なのです!このことがもし公爵家側に知られてしまえば、マーガレット様はすぐさま取り上げられ公爵家のいい様に使われてしまうことは想像に難くありません。せっかく公爵家から逃げ出せるチャンスがあるのにそれを台無しにしてしまうわけにはいきません!」
はぁはぁと一息でまくし立てたライラの迫力に、母は少々引いているようだが「このことは隠しておく必要があるのね?」と神妙な顔で頷いた。
「とはいえ、マーガレット様は未だ判断のつかない赤子でございます……。来客の際には眠っていてもらわなくては、不意に念話スキルを使用してしまう恐れがございます」
「……メグちゃんのスキルを秘密にするには、来客の際には眠りの魔法を使用するしかなさそうね。あまり赤ちゃんに魔法は使用したくないのですが、仕方ありません」
オレは母のおっぱいを吸いながら(眠りの魔法!これは使えそうだ)と考えていた。
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