第2話 おじいさんとおばあさんがいました
実際の桃太郎ではお爺さんは柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行くと思うが、なぜこうも異世界感溢れる感じだったのか。
まぁ異世界だからこれでいいのだが…それはおじいさんおばあさんの職業が関係する。
この世界はいわゆるファンタジーだと言われていたものが当たり前の世界で、魔法は使えるし、ドラゴンやゴブリン、スライムなんかの空想上のものと言われていた生物もいる。
そしてそんな生き物たちがわらわら現れるダンジョンなんかも存在する。
そんな世界でお爺さんは回復術師、お婆さんは魔術師として生計を立てていた。
元々はパーティーメンバーとして一緒にダンジョンに潜っていたらしいが、限界を感じて今は山奥で隠居生活を送っている。
パーティーの回復役として所属していたお爺さん…名前はミゴウ。
自信がなく、どこかちょっと不安になる時もあるが、やる時はやる。そんな感じの人だ。
現在は薬草から回復ポーションを作り、冒険用のアイテムなんかを売っている店に卸したり、回復術師でバリバリやってた頃の噂を聞きつけて遠方からはるばるお爺さんのもとに治療を受けにくる人もいる。
味方へのバフ、敵へのデバフ、そして大量殲滅。お婆さんはなかなか腕利きの魔術師だったとよく自慢げに話してくれる。
今はそういった戦闘用の魔法はほとんど使っていなかったが、その腕は今も健在だ。
強かでいわゆる「肝っ玉母さん」と言った感じで、我が子がいじめられていたらすぐに助けに行きそうな、そんな感じの人だ。
お婆さんことカンロは、パーティーの中でも強かな女性だったらしく、先に告白した方もお婆さんらしい。強い。
そんな二人と暮らしていくうちに、赤ちゃんだった俺の体はみるみる成長していき、自分で言うのもなんだが、物語通りに力が強く、気立ての良い青年といった風貌に成長していったのである。
異世界転生をしたにしては平和すぎる日々を過ごしていたある日、日中に街に降りて、薬を売りに行っていたおじいさんがある話を口にした。
「新しいダンジョンが見つかったらしいぞ、まだ一般の冒険者は入れないらしいが国の調査団が言うには見たことのない魔物だらけだとか…街中にそんな魔物が現れたらどうなってしまうんだ…」
そう心配するお爺さんにお婆さんはキッパリと言う。
「なぁに、そんな心配今してもどうにもならないじゃない。そんな心配しなくても、ダンジョン内の魔物が外に出ることなんて滅多にないし、現れたとしても街にまでで侵入を許したら調査団の面子が立たないよ」
「それはそうなんだがなぁ…」
「大体、今はハクトーだっているじゃないか。この子は力も強いし、他人にも気を配れるし冒険者なんてピッタリだよ。ねぇハクトー?」
『えっ』
予想外の話の振られ方をしてしまった。
新しいダンジョン、新しい魔物と聞いてワクワクしないといったら嘘になる。
しかし、別に俺は剣術を習ってるわけでもなかったし、戦闘やダンジョンの知識といったら二人から教わったことだけだった。
正直今の状況じゃまだまだだと思っていたから、そんなふうに思ってもらえてるなんて予想外である。
『そうかな』
なんとなく当たり障りのない答えを返した俺にお婆さんは続けてこう言った。
「なぁに、謙遜することなんてないさ。実際に産んだわけじゃないが、ハクトーは自慢の息子だよ。」
それもそうだな…とお爺さんも頷きながらそう言った。
その日はそんな感じで終わったのだが、その後も俺の知らないうちにお婆さんが勝手に話を進めていたようで、明日は冒険者協会に冒険者登録をしに行こう!と言った日になっていた。
異世界の最強職は桃太郎でした〜犬猿雉がなんか違う気がするけど強いからいいか〜 銃口向 @jukoumukeru
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