第13話 口(内)は災いの元?
今回は、私が新米ママ時代に、酷い口内炎に悩まされていた時のお話をさせていただこうと思います。
慣れない子育ての疲れで、日に日に増え続けていた口内炎。
一向に治る気配のないその口内炎を何とかしようと、私は薬局で口内炎用の市販薬を買いました。
その頃、CMでよく見かけていたその薬。あくまでもイメージですが、とてもよく効きそうな気がします。
私はさっそく、箱から薬を取り出します。中からコロンっと、小さなチューブに入った軟膏が出てきました。
(うーん、……この形状にこのフォルム。正直なところ、あの薬を彷彿とさせるんだけど……)
あの薬とは、その当時、毎日のように使っていた塗り薬のことです。
私の目にはどうしてもその軟膏が、毎日使っている『あの皮膚炎の薬』に見えて仕方がありません。
これは口内炎用のモノであってあの薬とは別物だと、頭では分かっているのですが、あまりにもそっくりなその形状に、正直、口内に塗るのがためらわれてしまいました。
しかし『この痛みを治すためならば!』と、私は自分に言い聞かせ、綿棒を使って薬を患部に塗りました。
おかげで3日もすると、すっかり口内炎は良くなりました。
さて、ここからがこのお話の本題です。
私が、口内炎の痛みに苦しんだことなど、すっかり忘れてしまった頃のこと。
「なあ。あの口内炎の薬って、もう使ってないんだろう?」
我が夫・キヨっちゃんが、突然そんなことを言ってきました。
「うん? もう使ってないけど……、もしかして口内炎ができたの?」
「いや、俺じゃなくて『おんじ(お義父さん)』が口内炎が痛いって言ってるから。お前が嫌じゃなかったら、あの薬、おんじにあげてもいいか?」
「あぁ、はいはい、そういうことね。いいよ〜」
そう言って、私は薬を取り出すために家事の手を止めました。
しかし、そんな私のことを気遣ってか、——
「あ、いいよ大丈夫。俺が渡しておくから」
——と、キヨっちゃん。
薬箱からサッと薬を取り出すと、お義父さんに薬を渡しに行きました。
そんな、何気ないやり取りがあって数日後……
私が薬箱の整理をしていた時のことです。
なぜか薬箱の中から、お義父さんに渡したはずの口内炎の薬が出てきたのです。
あ…あれ? 渡したはずの口内炎の薬が何故ここに……?
まさか……!? 凄く嫌な予感が……
私は、その『嫌な予感』が外れていることを願いながら、夫に——
「……ねえ? 口内炎の薬がここにあるんだけど、もしかして返してもらった?」
——と、問いかけました。
「え? 返してもらってなんかないぞ?」
キョトンとした顔でそう答える我が夫・キヨっちゃん。
どうやら夫は口内炎の薬と間違えて、得体の知れない何かのお薬をお義父さんに渡していたようなのです。
あわわわわ! 早く回収してきてぇぇぇ!
お義父さんがまだ薬を使っていないことを祈りながら、夫を薬の回収に向かわせました。
回収してきてもらったその薬は、やはりというか何というか、冒頭で私が懸念していたあの薬……
息子ちゃんの『オムツかぶれ用の塗り薬』でした。
その事実を知って、腹を抱えて爆笑する夫。
いや、そこ笑うところじゃないでしょう?
「口に入れるモノなのに、気を付けてくれないとダメじゃない!」
そう激怒する私に対し、夫は——
「でも、使った本人は、『うん、よく効いた!』って、凄くご満悦だったぞ?」
——と、悪びれることなくそう言うと、再び腹を抱えて大爆笑を始めたのでした。
わ……笑っちゃダメでしょ……
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