第11話 踊り迫る恐怖?

 今回は我が夫、キヨっちゃんと息子ちゃんのお話をさせていただきます。


 あれは、息子ちゃんがつかまり立ちをし始めたばかりの頃の、とある休日のことでした。


 私は息子ちゃんの子守りを夫に任せ、掃除に洗濯にと、家の用事を忙しなくこなしていたのですが……


「ぅあぁぁぁん!」

「わっはははは!」


 突然、リビングから息子ちゃんの泣き声と、楽しそうな夫の笑い声が聞こえてきました。


 何か……、問題が発生したようです。


 ただ、聞こえてくる夫の楽しげな笑い声から、危機的な状況ではないのだろう、とは思いました。


 ……ですが、一向に泣き止む気配のない息子ちゃん。


 なんだろう……ちょっと悪い予感がします。


 私は急いで二人のいるリビングへと駆け付けました。


「ちょっと、どうしたの?」


 そう言いながらリビングを覗き込むと、『ダンシングキョ◯ちゃん』(音に反応して動くオモチャ) に追い詰められて、部屋の片隅で泣き叫ぶ息子ちゃんの姿が目に飛び込んできました。


 そのかたわらには、爆笑しながら『ダンシング◯ョロちゃん』の進路を息子ちゃん方面へと調節するキヨっちゃんの姿が……


 な……何をやっとるんだぁァァァ!!

 子守りをお願いしているのに、泣かせてどうするーー!?


 息子ちゃんの泣き声に反応して、息子ちゃんに踊り迫るキ⚫︎ロちゃん。

 そのクチバシが息子ちゃんのすねに触れ、さらに泣き叫ぶ息子ちゃん……


 私は、そんな負のスパイラルにおちいって泣き叫ぶ息子ちゃんを救い出すと、これは一体どういう事なのか!と、夫を問い詰めました。


 すると、キヨっちゃん——


「いや、俺は何もしてないぞ? 俺は喜ぶと思ってキョ◯ちゃんを息子ちゃんの方に向けただけだし? 息子ちゃんが自分で呼び寄せただけだし?」


 ——と、悪びれる様子もなく、ニヤニヤしながらそんなことをのたまいます。

 まさに、弟にイタズラを仕掛ける兄の発想!!


 お…お…、お前は、悪ガキかぁぁぁ!? 親のすることじゃねぇぇぇ!!


 ……いやぁ、あの時は散々に叱り飛ばしましたよ。


 ちなみに我が夫、二人姉弟でしたが、お姉さんとは歳が九つ離れていたこともあり、実質一人っ子状態で育ったんだとか。


 なので、『弟』という存在に強い憧れを持っていたそうで、息子ちゃんとは兄弟のような関係でじゃれ合いたとかなんとか……。


 いや、さすがにそれは無理があるでしょ?


 父親が我が子を弟のように扱うのは間違っている!と、主張する私に対して、夫は『息子ちゃんの闘争心を鍛えてやっているんだ』などと、訳の分からないことを言い出す始末……。


 本当に中身が『お子ちゃま』で、困ったものですよ……

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