第8話 にわか信心、罰当たり

 皆さま、 GWはいかがでしたか? きっと充実した休日をお過ごしになられたことと思います。

 かくいう私はこのGW、夫の鶴の一声で、奈良と京都へ観光という名の修行の旅へ連れ出されておりました。


 修行?と思われるかもしれませんが、行き先がお寺ばっかりだったんですよ。しかも景色を楽しむ間もなく、次!ですからね。


 それもこれも全て、夫がここ最近ハマっている『御朱印集め』のせいなのです。

 今回はその時のことを、ここに書き残しておこうと思います。


 あれはGWの前半、4月28日のこと。

 私たち一家は、まだ日も登らぬ早朝4時に自宅を出発し、一路京都・奈良方面へと向かいました。


 ……4時ですよ、4時。


 確かに、片道3時間ほどの道のりですが、この出発時間、渋滞を見越しているとはいえ、ちょっと早すぎると思いません? (拝観時間は8時〜)

 まるで、推しの数量限定プレミアムグッズを手に入れんとするほどの気合いの入れようです。(行き先はお寺……)


 道中、渋滞に巻き込まれることもなく、7時前には目的地に到着。

 おかげで1時間ほど待ち惚けを喰らいました……。


 やっと拝観時間になり、拝観料を支払って中へ。(あえて、お寺の名前は伏せさせていただきます)


 その日は雲ひとつない晴天。5月とは思えないほどの暑さの中、玉砂利に足を取られながらも参拝を済ませた私たち一家。


 さて、記念の写真でも撮りましょうかね、と息子ちゃんとスマホで写真の撮り合いっこをして戯れていた私に、納経所で御朱印をもらってきた夫が一言。


「さあ、次いくぞ!」


 ……次?


 事前に、欲しい御朱印があるから付いてきて欲しい、とは確かに聞いていましたが……


「……、後どれくらい巡る予定?」


「そりゃあ時間がある限り行けるところまで行くぞ? 言ってなかったっけ?」


 聞いてませーん!!


 聞けば最低でも、あと三ヶ所は巡りたいとのこと。

 まあ、遠方まで来ている訳だから、一度で済ませたい気持ちは分かるけど……


 そこからは、トライアスロンの如く『車移動、参拝、御朱印を貰う』を繰り返し、気付けばもう夕方です。

 一応、目標としていた四ヶ所はクリア! 五ヶ所目の参拝を終え、やれやれと思っていた私に、またしても夫が一言。


「ギリギリ、もう一ヶ所巡れそうだな……」


 今の時刻は4時20分。

 拝観時間は5時迄ですが、拝観受付は4時30分です。


 あと10分しかないやないかーい!?


 また今度にしよう?という私に、すぐ近くだから!と粘る夫。


 ここで無理に反対しても、後で夫にブツブツ言われることは明白です。

 仕方ないので、夫の言う最後のお寺へ向かいました。


 確かに夫の言う通り、ものの数分で最後のお寺に到着しましたが、受付で『今からだと充分な拝観ができませんが、よろしいのですか?』と説明を受けました。


 それに対して、夫は『御朱印を貰うだけだから』と説明。(何気に失礼……)

 すると受付の人は『ここから納経所まで、10〜15分ほどかかりますが、大丈夫ですか?』と。


 もちろん夫は了承。私たちは拝観料を払って境内へ入りました。


 ……が、受付の人が思い出したかのように『こちら、5時に閉門してしまいますのでそれまでにお出になってください。でないと閉じ込められてしまいますのでお気をつけ下さい』と何やら恐ろしいことをおっしゃいます。


 これは大変、一大事です。

 悠長に歩いていては、とても間に合いそうにありません。


 なので私は『私たちのことはいいから先に行って!!』と、どことなく厨二病感あふれるセリフでもって、夫を納経所へと向かわせました。


 ふう、やれやれ。


 これで時間的ゆとりが出来た…と一息ついた私と息子ちゃんは、本堂にお参りしたり、道中にあった五重塔をスマホで撮影したりしながら、マイペースに夫の後を追いました。


 そうこうしながらやっと辿り着いた納経所。

 しかし、先に納経所へ向かったはずの夫の姿がどこにも見えません。


 アレ? もしかして……入れ違いになった!?


 一瞬そう思いましたが、ここに至るまでの道は一本道。その可能性は、ほぼありません。


 時間を確認すると、時刻は4時43分。逆算すると、あと7分以内に御朱印をもらわなければ境内に閉じ込められてしまいそうです。


 一体、どこへ行ったんだぁぁ!!


 ヤキモキしながら、急いで夫のスマホに連絡を入れると、やはりというか何というか、夫は納経所とはまるで違う所におりました。


 結論から言うと、夫、裏口を通って境内から出ておりました。しかもその裏口、一方通行の回転ドア……


 いや、場外退場しとるやないかーい!!

 潜り抜ける前に気付くでしょーが!?


 たまたま近くに住職らしき人が居たそうで、間違って出てしまったことを説明したら、慌てて境内へ入れてくれたそうです。


 おかげで無事に御朱印をもらうことはできましたが、人騒がせな人ですよ、本当……。


 今回はただの愚痴回になってしまいましたね。ごめんなさいっ。

 ……でも、まぁ、帰りにサービスエリアで、私好みのお土産(お菓子)をたくさん買ってもらったので、結果オーライです!

 (夫は私のことを『安上がりな女』だとよく言う……何故に?)

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