第7話 息子ちゃんのお花見の話

 さて、今回は息子ちゃんのお花見エピソードを書かせていただきます。

 安心してください、今回は和み回です! 平和に行きます。

 それでは、毎度お馴染みのこのセリフから……コホン!


 これは今から〇〇年前、息子ちゃんが小学2年生の時のお話です。

 季節は春、桜が見頃を迎えたある週末のこと。


 私たち家族は、いつもの買い物をするために、いつものように車を走らせておりました。(我が家では『まとめ買い』という形で、週末に一週間分の買い物をしています)


 信号待ちで止まった時、道路脇の民家に咲いた満開の桜を見た夫が急に——

「……綺麗だなぁ、……今から桜、見に行くか!」

 と、言い出しました。


 相変わらず突然だなぁ……


 夫は思いついたら即行動!の『せっかちさん』ですので、この時点でお花見に行くことが決定しました。


 その日は天気も良く、確かに行楽日和ではありましたが、週末の買い物に行こうとしていただけですので、当然、何の準備もしておりません。


 大人だけなら桜並木を散策するだけで十分なのですが、小学2年生の息子ちゃんにそれを強いるのはちょっとかわいそうな気がします。


 せめてお弁当だけでも…と思い、私はお花見スポット近くにあったスーパーへ立ち寄りました。


「さあ、息子ちゃん! お花見用のお弁当、何が食べたい? 何でも買ってあげるよ!」


 私はお花見気分を盛り上げるためにそう言って、息子ちゃんに好きなものを選ばせようとしました。


 しかし、普段から食の細い息子ちゃん。これと言ったものがないのでしょう。なかなかお弁当を決めることができません。


「これ、時間がかかりそうだから、先に飲み物とかお菓子とか、他の買い物してきてくれ。息子ちゃんは見ておくから」


 夫がそう言って、私に買い物をしてくるよう促します。


 たしかに、時間がかかりそうでしたので、私は夫のその言葉に甘えることにいたしました。


 夫に息子ちゃんを託した私は、ウエットティッシュや割り箸にジュースなど、お花見に必要そうな商品を手際よく集めていきます。


 粗方の商品を集め終わり、最後にお菓子類を買い物かごへ放り込んでいた時、息子ちゃんがニコニコと満面の笑みを讃えながら私の元へ駆け寄ってきました。


 息子ちゃんは、ラップに包まれた30cmほどの細長い食品トレーを、その手に握り……いえ、まるで宝物であるかのように優しく抱きしめていました。


 ん? こ、これは見るからにお弁当ではないよね?

 ……息子ちゃんは一体、何を持ってきたの!?


 私は、息子ちゃんの後ろを歩いてきた夫に目配せして説明を求めました。


「いや、止めたけど『これが良い』って言い張って聞かんのよ……」


 夫は、ほとほと疲れた様子でそう言います。


 食の細い息子ちゃんのハートを、これほどに鷲掴みにした食べ物って、一体、何!?


「息子ちゃん、何を選んできたの? 見せて?」


 私が優しく呼びかけると、息子ちゃんはニコニコしながら、その『何か』が入ったパックを差し出しました。


 息子ちゃんが選んできた、お花見用のお弁当(?)の正体……


 それは……


 とっても美味しそうな……


 『焼きサンマ』でした。(しかも、お頭付き!)


 まあ、いいんですけどね……。


 ということで、焼きサンマを持って花見に行きましたよ。


 たくさんの花見客で賑わう、とある公園。

 そこに備え付けられたテーブルベンチに陣取って、買ってきたお花見弁当を広げてみれば、華やかなお弁当の中で異彩を放つ焼きサンマ……


 晴天の空の下、零れ桜を眺めつつ、ご満悦で『焼きサンマ』を食す息子ちゃんなのでした♡

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