第39話 無貌の巨人
4人を殺し、残るはたった1人。
リーダーらしき男に視線を向けると、意外なことに不敵な笑みを浮かべていた。
死が目前に迫り、気でも狂ったのだろうか?
疑問を抱く俺の前で、男は口を開く。
「驚いたぜ、まさかこんな力を隠し持ってたとはな。だが、お前がはしゃげるのもここまでだ」
そう言いながら、男は
水晶からはただならぬオーラが醸し出されている。
「……マジックアイテムだな。気配的に、別の空間にでも繋がっているのか?」
「ああそうだ。だが、今さら気付いたところで遅い! 見ていろ、今から出現するのがテメェを惨殺する魔物だ!」
男が叫ぶと同時に、水晶から漆黒の光が放たれる。
数秒後、光が収まった時――そこには1体の巨人が出現していた。
背丈は10メートルに近い。
全身は灰色の肉で覆われており、強靭な腕が四本もついている。
そして何よりの特徴として、その巨人には顔がなかった。
いや、正確には顔自体はあるが――目、鼻、口、耳といった部位がなく、ただただ灰色に塗りたくられている。
まるで子供が落書きした化物のようだ。
俺たちは同時に魔物のステータスを確認する。
――――――――――――――
【
・レベル:2500
・ダンジョンボス:【
――――――――――――――
「そんな! レベル2500なんて……!」
まず、声を上げたのは後方にいるエルフの少女――イネスだった。
その姿とレベルの高さに圧倒され、顔が青ざめている。
続けて、反応したのは目の前にいる男。
彼は興奮した様子で声を張り上げた。
「は、ははっ! これは予想外だ! 【
男はそのまま、勝利を確信した表情で俺を見る。
「見たか! いくらお前が強かろうと関係ない! 俺たちに逆らった罰として、お前だけは絶対、道連れにしてみせ――」
刹那、空中に数十の剣閃が瞬いた。
遅れて肉が断たれる音が響き、灰色の血飛沫が周囲に散らばる。
灰色の血液を持っている存在など、この場には一体しかいなかった。
『グッ、グォォォオオオオオ』
断末魔の声と共に、その場で灰の霧となり霧散する巨人。
場にはしばらく、静寂が続いた後――
「――――は?」
リーダーらしき男が、あまりにも間抜けな声を漏らした。
俺はゆっくりと男に近づいていく。
「茶番はこの程度でいいか?」
「……は? いや、え? ……待て、待て待て待て! テメェ、いったい何をしやがった!? 何で
「俺が殺した、ただそれだけだ」
レベル2500は、この迷宮都市であっても最高クラスの水準だろう。
だが、ネクロ・デモンに比べたら塵芥も同然。
俺からすれば、1秒もあれば討伐に事足りる雑魚だ。
そして今、目の前で尻もちをつくこの男は、それ以下の存在でしかない。
男は信じられないとばかりに、細い目を大きく見開いていた。
「あ、ありえねぇ! 今のは超S級個体だぞ!? 大迷宮の深層を攻略しているトップ冒険者ですら単独では敵わない魔物だ! それを、お前のようなガキが圧倒するなんて、ありえるはずがない!」
男の言葉を無視し、俺はさらに距離を詰めていく。
男の前で立ち止まった俺は、
「待て、落ち着け! 本当に俺を殺すつもりか!? 絶対に後悔するぞ! なにせ俺のバックにいるのは、あの――――」
一閃。
男の首が宙を舞い、残された体がぽとりと地面に落ちる。
「最後に何か言おうとしていた気がしたが……まあ、いいか」
俺は
そして振り返り、イネスに顔を向けた。
「終わったぞ」
「…………」
しかしイネスは呆然とした表情を浮かべるだけで、返答は返ってこない。
彼女が我に返るまでもう少しかかりそうだ。
何はともあれ、これで男たちとの戦い(もとい、一方的な惨殺)は幕を閉じるのだった。
――――――――――――――――――――――
【大切なお願い】
ここまで本作をお読みいただき、まことにありがとうございます!
もし本作を少しでも気に入っていただけたなら、
・本作をフォロー
・下の『☆で称える』の+ボタンを3回押す
の二つを行い、どうか本作を応援していただけると励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます